量子場光学でのダブルスリット干渉の解釈

 前回の続きとして、今回は今更ながら、自仮説の量子場光学の立場から、1光子レベルの光波束によるダブルスリット干渉実験の解釈を図を用いて説明する。かなり以前に同様の説明をしたがその時点では半古典論との違いを明確に説明することが出来ていなかった。

 1光子レベルの光波束によるダブルスリット干渉実験のイメージ図を下図に示す。

ダブルスリット光学系のイメージ図

 発光源の束縛電子場の原子に束縛された電子(黄色)が光学遷移すると、その電子を中心に光子の素励起情報の波動が1光子レベルの光波束として光学遷移した電子を中心にして自由光子場を光速で同心円状に拡がっていく。発光源から十分に離れた位置では光子の素励起情報の波動は平面波で構成された波束と近似することができる。平面波である光子の素励起情報の波動はダブルスリットにおいて両方のスリットを通過する。両方のスリットを通過した光子の素励起情報の波動は干渉し、受光素子の表面において干渉縞形状の確率分布を形成する。ここで重要なことは、もし、光速で伝搬するのがエネルギーとするのであればエネルギー密度が低下してしまうことになってしまうが、自由光子場を光速で伝搬するのはエネルギーではなくて光子の素励起情報の波動であるから、同心円状に拡がっても情報量が減るということはない。すなわち、受光素子の表面に形成される干渉縞はエネルギー分布ではなくて確率分布である。受光素子を構成する原子に束縛された電子のうちの1つが励起される電子(黄色)として干渉縞形状の確率分布に依存して確率的に選択される。これは、沢山の枯葉のうちの1枚の枯葉が風に揺られて落ちるのに似ている。選択された電子は、光子の素励起情報に基づいて励起される。これが受光素子の表面でスポットとなる理由である。エネルギーの移動について説明すると、発光源の1つの電子(黄色)の光学遷移のエネルギー \hbar \omega が受光素子の1つの電子(黄色)の励起エネルギー \hbar \omega となる。すなわち、エネルギー \hbar \omega は、発光源の束縛電子場から1光子レベルの光波束が伝搬する自由光子場との間、及び、その自由光子場と受光素子の束縛電子場との間で移動する。ここで、 \omega が時空点に依存する量でないことは重要で、自由光子場を伝搬するのがエネルギーでなくて光子の素励起情報の波動であることを意味している。なお、受光素子の電子が選択されて励起される確率は発光源の光学遷移する電子との距離が離れるほど小さくなるのは言うまでもないが、離れるほど小さくなる程度が縮小する点も重要で平面波と近似できる理由である。なお、光が粒子性を持つと言う意味は1個の光学遷移する電子が1個の受光素子の電子を励起するという離散性を指しており、大きさを持つ粒子を意味するのではない。さらに、光が波動性を持つという表現は正確ではなく、1光子レベルの光波束という波動そのものである。

 1光子レベルの光波束が次々に伝搬すると、受光素子の表面のスポットが干渉縞形状の確率分布に基づいてスポットの数が増加していき、多数のスポットで形成された干渉縞が形成されることになる。これが、量子場光学におけるダブルスリット干渉の解釈である。

 以上のように、量子場光学としては、ダブルスリット干渉実験において、1光子レベルの光波束は光子の素励起情報の波動として両方のスリットを通過するとしている。そして、この光波束は進行方向への少しずつ波数の異なる平面波の重ね合わせで構成されているとしている。以上が自仮説の量子場光学によるダブルスリット干渉実験の解釈である。

 なお、「光子の素励起情報の波動」という表現はわかりにくいかもしれない。より厳密に言えば、自由光子場を光子の素励起情報が伝搬することによって生じるゲージ場の波動である。このゲージ場の波動は、光子の素励起情報の伝搬に伴って、仮想光子から実光子、そして実光子から仮想光子と変化することで生成する。さらに、仮想光子や実光子が登場したからといって、エネルギーの増減を想像してはならない。仮想光子は \frac{1}{2} \omega の角振動数、実光子は \omega の角振動数を素励起情報として保有するものであって、 \hbar が掛けられたそれぞれエネルギー \frac{1}{2} \hbar \omega \hbar \omega保有するものとは考えていない。 \hbar は束縛電子場と自由電子場との相互作用において場と場との間のエネルギー移動において登場するものと考えている。

 以上のように、自仮説の量子場光学は、場の量子論を考慮すると言いながら、量子力学や量子光学だけでなく場の量子論とも相違している点が出てきてしまった。これはただの勉強不足が原因の可能性もあるが、「なるほどスッキリ」という感覚を得ることができるように、自仮説の改善とその下地となる量子論の勉強とを並行して進めていくつもりである。