量子場光学と調和振動子近似の関係3

 かなり前になるが2024-01-17の投稿「量子場光学と調和振動子近似の関係2」で次のように書いた。

『以上のように考えると、質量の無い光子について調和振動子近似を用いることに以前は抵抗があったが、近似として考えれば受け入れても良いような気がだんだんしてきた。。。歴史的順番としては粒子の量子論調和振動子がまず扱われ場の量子論に応用されたのかもしれないが、本筋としてはあくまで場の量子論において場をフーリエ展開して運動量表示した際の係数が生成・消滅演算子を意味するという点であって、場の量子論の近似として粒子の量子論では調和振動子で近似できるという点を忘れてはいけないように思う。』

 質量の無い光子について調和振動子近似を使うことも近似としては良いのではと思いかけていたが、光波束の伝搬を考えている中で少し気になることが出てきた。非相対論的な量子力学及び量子光学では、光波束が自由場を伝搬することで時間発展していくと波束の幅が拡がってしまうのだ。これは質量の無い光子に対して質量 m があるとした波束を適用したために、 E_k = \frac{p^2}{2m} = \frac{\hbar^2 k^2}{2m} によって分散が生じてしまったためである。光子の場合は、 E_k = c p = c \hbar k であって分散は無い。別の見方をすると、非相対論的な量子力学は非相対論的な Schr\ddot{o}dinger 方程式 i \hbar \frac{\Psi}{dt} = \left( - \frac{\hbar^2}{2m} \nabla^2 + V \right) \Psi を用いることとも関係している。 p \rightarrow - i \hbar \nabla の対応関係によれば、 \frac{p^2}{2m} + V \rightarrow - \frac{\hbar^2}{2m} \nabla^2 + V となっているのだ。それでは相対論化した Klein-Gordon 方程式なら良いのかというとそうもいかない。光子は質量が無いので Maxwell 方程式が対応するのだ。非相対論的な量子力学及び量子光学では波束の分散を抑制するために2次ポテンシャルに閉じ込められたままで波束が自由場を伝搬すると設定すると思われる。そして、この2次ポテンシャルが調和振動子ポテンシャルなのだ。このようにすると、波束は形状を変えることなく伝搬することができる。電磁場が多数の調和振動子の集まりで近似できるというのもたぶんこのような理由によるのだろう。以上から、量子力学及び量子光学で調和振動子近似を用いる理由がわかったような気がする。量子場光学で言えば、質量 m_e の電子が伝搬する擬自由電子場が対応している。そこでは電子が順行と Higgs 場との相互作用と逆行とそして Higgs 場との相互作用という順を繰り返しながら自由場を伝搬している。順行及び逆行自体はいずれも光速での移動だが時間の向きが異なるため、全体では光速よりも遅くなる。これが慣性質量の正体である。ただし、これは歴史的にはこの順番でも本来は量子力学は場の量子論の近似という視点で見れば本末転倒ではないだろうかとどうでも良いことかもしれないが気になった。そこで、今回、トンデモかもしれないが投稿してみた。。。