今年一年を振り返って

 今年は以前に比べて年初から多数の投稿をすることができた。そして、場の量子論を考慮して量子光学を見直すというスタンスで自仮説の「量子場光学」の構築をスタートした。そこでは、量子の素励起情報の波動という概念と、正世界(plus-verse)と負世界(minus-verse)とからなる双子世界(twin verse)という概念の導入と、量子の場図表現という量子状態の表現方法の提案とを行った。

 以下では今年に取り組んだ課題の棚卸しをする。

 一番目の課題は、電磁場の明白な共変的量子化を理解することであった。光速で移動する光に対して特殊相対論を適用しないのは無理があるのではという発想に基づくものであった。そして、 Coulomb ゲージではスカラーポテンシャル \phi が遠隔作用となってしまい、相対論的ではない点が気になっていた。ただし、明白な共変的量子化には不定計量の理解が必要であった。不定計量を十分理解できたとは言えないが、なんとか中西襄先生の「場の量子論」を読んで数式のフォローを試みた。そこでは、物理的状態として2つの横波光子とスカラー光子、非物理的状態として縦波光子という光子の概念が得られた。光は2つの横波光子で説明でき、「 Coulomb 力は仮想光子のキャッチボール」というイメージがスカラー光子を用いて説明できることがわかった。

 二番目の課題は、光源を構成する原子に束縛された励起電子の光学遷移による発光をどのように考えるかであった。量子力学をベースにした量子光学では光源から光子が放出されるという表現が一般的であるが、場の量子論の下では光子は電磁場の量子化によって生成されており位置を特定できる粒子という存在ではない。そこで、「1光子レベルの光波束」という用語を提案し、それが光子の素励起情報の波動であると考えた。ここで、「素励起」は発光源での光学遷移に関係付けられる。束縛電子場の励起電子が光学遷移することで光子の素励起情報の波動が1光子レベルの光波束として自由光子場に移動し、その1光子レベルの光波束は光子の素励起情報の波動として自由光子場を伝搬するとした。光子の素励起情報の内容を現在構築中であるが、光子の素励起情報の波動は発光源が元になる縦モードと横モードの情報とが自由光子場の光学系に対応して変形しながら自由光子場を伝搬する一種の確率波と考えた。すなわち、エネルギーは場と場との間で移動するが場内を伝搬するものではなく、場内を伝搬するのは量子の素励起情報の波動であると考えた。さらに、素領域という概念を導入して仮想光子と実光子との変換で伝搬する波束を表現した。

 三番目の課題は、光のダブルスリット干渉のメカニズムの理解だ。自仮説の「量子場光学」を用いて説明を試みた。ダブルスリット干渉は光だけではなく、電子、中性子 C_{60} 等の分子と、単独量子だけでなく複合量子においてもみられる一般的な現象であり、今後とも興味深い話題である。

 四番目の課題は、真空エネルギーの理解である。場の量子論において真空は最低エネルギー状態を意味しており、相対論的不変性を満足するためには並進不変性の点から真空エネルギーが0となるべきである。なお、非相対論的である量子光学では真空エネルギーは \frac{1}{2} \hbar \omega であって0とはなっていない。この一見矛盾とみえる状況をどのように考えるかを双子世界の導入で解消できることを提案した。すなわち、仮想量子(粒子)の正世界での生成と負世界での消滅を絶えず繰り返すイメージに対して、正世界での \frac{1}{2} \hbar \omega と負世界での - \frac{1}{2} \hbar \omega とが相殺することで時空で積分すれば0となるという考え方を提案した。

 五番目の課題は、量子力学が場の量子論の近似であるというスタンスに対して、場の量子論も未知の統一論の近似であるという点について、それでは未知の統一論はどのようなものかという疑問である。そこで、自仮説の量子場光学に相性が良いと思われる量子 Einstein 重力による重力場の共変的量子論を採用することとした。私の力量ではほとんど理解できていないが、電磁場の明白な共変的量子化と類似しており、イメージが掴み易いという利点がある。

 六番目の課題は、時間の矢との関係である。量子の場図表現において、光子は横波とスカラー波が物理的状態でP軸方向の一軸振動で図表現した。電子は横波と縦波が物理的状態でP軸方向とT軸方向の二軸振動でかつ反粒子陽電子との対応付けで回転方向という形で表現した。大局的には過去から未来への時間の矢は存在するが、時間方向に局所的には量子は時間対称性を持つものとした。これで電子の Zitterbewegung やスピン左巻き状態 \psi_L とスピン右巻き状態 \psi_R との繰り返しとしての混合状態の存在が見えるようになった。

 七番目の課題は、量子もつれエンタングルメント)の量子場光学による説明の試みである。量子光学でいう量子もつれと量子場光学で私が勝手に考えている量子もつれとではなんとなく違いが有りそうな気がしているが、勉強不足で今後の検討課題だ。

 とりあえずざっと検討した課題を挙げてみたが抜けもあるかもしれない。そして、これらの課題は現在進行中であり、まだ十分に理解できた段階ではない。自仮説の「量子場光学」は少し概要がみえてきたレベルである。それでも以前に比べると今年は実りが多かったと自負したい。ただし、今後はスピードはかなり落ちるだろう。私にはどんどん課題が難解となってきているためだ。そして、もう一つ気になっているのは、 python 応用がほとんど進んでいないことだ。 python を量子場光学の定量的なツールとして使いたいのだが、まだまだ先が見えない。そして、最終的には、ブログのタイトルである「存在は全てが光」への道である。今年も少しは検討したがまずは量子場光学の構築が先決である。

 ということで、来年も宜しくお願い致します。。。