量子場光学から見た受光素子とガラス板について

 今回は、自仮説の量子場光学を用いて、光が受光素子に到達して電流として検知されることの説明と、光がガラス板を透過する際に位相が変化して位相遅延板として機能することの説明を試みる。

 量子場光学において重要な点は、自由光子場を伝搬するのはエネルギーではなくて光子の素励起情報の波動であるという点である。さらに、エネルギーの移動は、例えば自由光子場と束縛電子場の間というように、場と場とで生じるとする点である。

 まずは、光が受光素子にて電流として検出されることを説明する。受光素子は半導体(例えばPN接合型)で構成されているものとして説明する。発光源を構成する原子に束縛された束縛電子場の電子が光学遷移すると1光子レベルの光波束である光子の素励起情報の波動が下図のように自由光子場を同心円状に伝搬する。同心円状の光子の素励起情報の波動は距離が遠ざかると平面波として振る舞う。自由光子場を伝搬する平面波の波束である光子素励起情報の波動が受光素子に到達すると、受光素子を構成する原子に束縛された束縛電子場の電子が確率的に選択されて励起電子(黄色)となる。すなわち、その電子は価電子帯から伝導帯にバンド間遷移して伝導電子となる。その伝導電子の素励起情報の波動は受光素子の半導体内を光速で伝搬して電子として受光素子の外部の金属線に取り出される。金属線に取り出された金属の自由電子の素励起情報の波動は光速で金属線内を伝搬して電流計に到達し、電流計にて検知される。

受光素子の動作説明図

 次に、1光子レベルの光波束がガラス板を通過することでガラス板が位相遅延板として機能することを説明する。1光子レベルの光波束である光子の素励起情報の入射波動Aは下図のように左からガラス板に向かって平面波の波束として自由光子場を伝搬してくるものとする。なお、平面波として図示すると図が複雑になってしまうので下図では単に矢印で平面波の波束を示している。一方、ガラス板にはガラス板を構成する原子に束縛された束縛電子場の電子が多数存在する。自由光子場を伝搬してきた光子の素励起情報の波動が光速でガラス板に到達すると、ガラス板を構成する多数の原子に束縛された多数の電子のうちの例えば電子1(黄色)が確率的に選択されて励起される。ガラス板は絶縁体(バンドギャップが大きい)なので励起電子は伝導電子になることができない。励起電子は光学遷移することですかさず光子の素励起情報の波動を同心円状に自由光子場に対して放出する。ただし、同心円状に伝搬する様子は図が複雑になるため図示を省略している。これはまさしくガラス板を構成する原子による光の弾性散乱を意味している。次に、電子1から放出され同心円状に伝搬する光子の素励起情報の波動がガラス板を構成する原子に束縛された別の電子に光速で到達し例えば電子2が確率的に選択されると電子2が励起され、励起された電子2は電子1の場合と同様に光子の素励起情報の波動をすかさず同心円状に自由光子場に放出する。これは2回目のガラス板を構成する原子による光の弾性散乱に他ならない。電子2から自由光子場に放出された光子の素励起情報の波動はガラス板の通過波動Bとして図において右方向に平面波の波束として光速で自由光子場を伝搬する。電子1及び電子2による2回の弾性散乱で考えても、光子の素励起情報の波動は図での左から右への一方向の伝搬だけでなく逆方向への伝搬も伴うので、ガラス板で波動の遅延が生じることになり、光子の素励起情報の波動の左から右へと向かうみかけの伝搬速度はガラス板を通過する間は光速よりも遅くなることになる。光速とこのみかけの伝搬速度の比がいわゆるガラスの屈折率ということになる。ここで重要なことは、光子の素励起情報の波動の伝搬速度はあくまで光速である点である。

 なお、下図の行程でのエネルギー移動を説明すると、まずは、入射波動Aが伝搬する自由光子場から電子1を束縛する束縛電子場へのエネルギー移動と、次に、電子1を束縛する束縛電子場から同心円状に光子の素励起情報の波動が伝搬する自由光子場へのエネルギー移動と、自由光子場から電子2を束縛する束縛電子場へのエネルギー移動と、電子2を束縛する束縛電子場から同心円状に光子の素励起情報の波動が放出され平面波の波束として図の左方向へ通過波動Bとして伝搬する自由光子場へのエネルギー移動とが次々に起こる。ただし、そのエネルギー移動は自由光子場から束縛電子場に移ってから即座に自由光子場に戻るので、実質的にエネルギー移動しておらず、まるで真空から生成して消滅する仮想光子とそっくりである。そして、あくまでエネルギー移動は場と場の間であって、場内を伝搬するのはエネルギーではなくて光子の素励起情報の波動である。しかしながら、実質的なエネルギー移動は起こらないので、光子の素励起情報の波動が単に散乱されたように振る舞うと近似することができる。これが光の弾性散乱のイメージである。光の弾性散乱において重要な点は、入射波動Aと通過波動Bとで素励起情報の角振動数が同じ値となって変化しないことである。なお、下図では説明を簡単にするために光の弾性散乱は2回だけの場合を示したが、ガラス板を構成する原子に束縛された電子は多数であり、多数回の光の弾性散乱が起こることでガラス板が位相遅延板として機能する。

ガラス板の位相遅延板としての動作説明図

 こんなふうに考えると、自仮説の量子場光学を用いて、受光素子の動作やガラス板の屈折率の意味が説明できると思うがどうだろうか。

 なお、今回の内容は光の半古典論で十分に説明できるもので特に目新しい点は無いが、今回は敢えて量子場光学での説明を試みた。量子場光学を用いれば、ダブルスリット干渉や量子もつれ光も含めて統一的に説明できそうな気がしている。そして、2023-10-01の投稿で説明したように、ランダウゲージのB場形式も量子場光学に取り入れることで、クーロン力の説明も含めることができそうな気がしている。とんでもなく戯言が肥大化してきてしまったのだが。。。