B場を補助場とする共変的量子化でのスカラー光子とクーロン力との関係

 クーロン力を詳細に理解するためには電磁場の明白に共変的な量子化を行う必要があるらしく、不定計量を理解することがその第一歩らしいということで、中西襄先生の「場の量子論」の本を用いて、B場(NL場)という中性スカラー場を補助場とした関係式を少しずつ勉強してきた。そして、私なりに理解したところをまとめておく。本に記載していない内容にまで拡げてまとめており、素人の理解なので内容は怪しいかもしれないが。。。

4次元運動量の生成消滅演算子を用いて、ゲージ場 A_\mu (x) を表すと、

 \qquad \displaystyle{ A_\mu (x) = \lim_{\epsilon \rightarrow +0} (2 \pi)^{ - \frac{3}{2}} 
\int d^4 p \; \theta ( p_0 - \epsilon ) \left[ a_\mu (p) e^{-i p \cdot x} + a^{\dagger}_\mu (p) e^{i p \cdot x} \right] } ・・・(1)

また、補助場である B (x) は、

 \qquad \displaystyle{ B(x) = (2 \pi)^{- \frac{3}{2}} \int d^4 p \; \left[ b(p) e^{- i p \cdot x} +  b^{\dagger} (p) e^{i p \cdot x} \right] } ・・・(2)

ここで、4次元運動量の関数としての生成消滅演算子は次のように定義する。

 \qquad \displaystyle{ a_\mu (p) \equiv -i (2 \pi)^{-\frac{3}{2}} \theta (p_0) \int d^3 z \; [ \delta(p^2) e^{i p \cdot z} \overleftrightarrow {\partial_0} A_\mu (z) + \delta ' (p^2) e^{i p \cdot z} 
 \overleftrightarrow {\partial_0} \square A_\mu (z) ] } ・・・(3)

 \qquad \displaystyle{ a^{\dagger}_\mu (p) \equiv i (2 \pi)^{-\frac{3}{2}} \theta (p_0) \int d^3 z \; [\delta (p^2) e^{-i p \cdot z} \overleftrightarrow {\partial_0} A_\mu (z) + \delta'(p^2) e^{-i p \cdot z} \overleftrightarrow {\partial_0} \square A_\mu (z) ] } ・・・(4)

 \qquad \displaystyle{ b(p) \equiv -i (2 \pi)^{-\frac{3}{2}} \theta(p_0) \delta(p^2) \int d^3 z \; e^{i p \cdot z} \overleftrightarrow {\partial_0} B(z) } ・・・(5)

 \qquad \displaystyle{ b^\dagger(p) \equiv i (2 \pi)^{-\frac{3}{2}} \theta(p_0) \delta(p^2) \int d^3 z \; e^{-i p \cdot z} \overleftrightarrow {\partial_0} B(z) } ・・・(6)

ここで、 a_\mu (p) は4次元ベクトル、 b (p)スカラーである。

また、場の方程式として、以前の投稿で示したように次式が成り立つ。

 \qquad \partial^\mu A_\mu + \alpha B = 0 ・・・(7)

 \qquad\square B = 0 ・・・(8)

 \qquad \square A_\mu - (1 - \alpha) \partial_\mu B = 0 ・・・(9)

式(7)~式(9)を用いて、

 \qquad p^\mu a_\mu (p) = - i \alpha b(p) ・・・(10)

 \qquad p^2 b(p) = 0 ・・・(11)

 \qquad p^2 a_\mu (p) = i (1-\alpha) p_\mu b(p) ・・・(12)

これらは形式的には、場の演算子をその正エネルギー部分で置き換えた場の方程式を4次元 Fourier 変換して得られる。

式(12)において、 p^2 = p_\mu p^\mu と、ランダウゲージを採用して \alpha = 0 とすると、

 \qquad p_\mu p^\mu a_\mu (p) = i p_\mu b (p) \\
\qquad \therefore \displaystyle{ a_\mu (p) = i \frac{b(p)}{p^\mu}, \quad a^\dagger_\mu (p) = - i \frac{b^\dagger (p)}{p^\mu} }

                     ・・・(13)

式(1)に式(3)の a_\mu (p) と式(4)の a^\dagger_\mu (p) を代入すると、

 \qquad \displaystyle{ A_\mu (x) = \lim_{\epsilon \rightarrow +0} (2 \pi)^{- \frac{3}{2}} \int d^4 p \; \theta (p_0 - \epsilon) \; \left[ i \frac{b(p)}{p^\mu} e^{-i p \cdot x} - i \frac{b^\dagger (p)}{p^\mu} e^{i p \cdot x} \right] \\
\qquad =  \lim_{\epsilon \rightarrow +0} i (2 \pi)^{- \frac{3}{2}} \int d^4 p \; \theta (p_0 - \epsilon) \; \frac{1}{p^\mu} \left[ b(p) \; e^{-i p \cdot x} - b^\dagger (p) \; e^{i p \cdot x} \right] }

                   ・・・(14)

ここで、ゲージ場 A_\mu (x) A_\mu = (\phi,\mathbf{A}) であるが、その0成分である \phi (x) を抽出すると、 \mu = 0 として、さらに、 p^0 = \omega_p を代入して、

  \qquad \displaystyle{ \phi (x) =  \lim_{\epsilon \rightarrow +0} i (2 \pi)^{- \frac{3}{2}} \int d^4 p \; \theta (p_0 - \epsilon) \; \frac{1}{p^0} \left[ b(p) \; e^{-i p \cdot x} - b^\dagger (p) \; e^{i p \cdot x} \right] \\
\qquad = \lim_{\epsilon \rightarrow +0} \frac{i}{(2 \pi)^{\frac{3}{2}} \omega_p } \int d^4 p \; \theta (p_0 - \epsilon) \; \left[ b(p) \; e^{-i p \cdot x} - b^\dagger (p) \; e^{i p \cdot x} \right] }

                   ・・・(15)

上式は、スカラーポテンシャル \phi (x)スカラー b(p) で表され、スカラー光子と関係していることを意味している。なお、 p_\mu \; (p_0 >0) という4次元運動量を持つ光子1個の状態としては、1つ目の横波光子 a_1^\dagger (p)|0> 、2つ目の横波光子 a_2^\dagger (p)|0> 、さらに、縦波光子 a_3^\dagger (p)|0>スカラー光子 b^\dagger (p)|0> の4つがある。

なお、補助条件は、 b(p)|phys> = 0 であるが、 p_1=p_2=0 という座標系で考えると、次式が成立する。

 \qquad <0|b(q) \; b^\dagger (p) |0> = 0 ・・・(16)

 \qquad b(q)|b^\dagger (p)|0> = 0 ・・・(17)

すなわち、スカラー光子 b^\dagger (p)|0> はゼロノルムだが補助条件を満たすので物理的状態である。

 以上のように、スカラーポテンシャル \phi (x)スカラー光子と関係し、クーロン力スカラー光子によって近接作用として記述されることになる。

 理解できているかどうか、間違っていないかどうかは自信があるわけでは無いが、ともかく式を追って本には記載は無いが勝手に拡張していくと以上のような結果が得られた。

 ちなみに、自仮説の「量子場光学」に対応してゲージ場 A_\mu (x) を運動量表示から波数表示に書き直しておくと次式となる。

 \qquad \displaystyle{ A_\mu (x) = \lim_{\epsilon \rightarrow +0} (2 \pi)^{- \frac{3}{2}} \int d^4 k \; \theta (k_0 - \epsilon) \left[ a_\mu (k) e^{-i k \cdot x} + a^{\dagger}_\mu(k) e^{i k \cdot x} \right] }  ・・・(18)

また、補助場である B (x) は、

 \qquad \displaystyle{ B(x) = (2 \pi)^{- \frac{3}{2}} \int d^4 k \; \left[ b(k) e^{- i k \cdot x} +  b^\dagger (k) e^{i k \cdot x} \right] } ・・・(19)

ここで、4次元波数の関数としての生成消滅演算子は次のように定義する。

 \qquad \displaystyle{ a_\mu (k) \equiv -i (2 \pi)^{-\frac{3}{2}} \theta (k_0) \int d^3 z \; [ \delta (k^2) e^{i k \cdot z} \overleftrightarrow {\partial_0} A_\mu (z) + \delta'(k^2) e^{i k \cdot z} 
 \overleftrightarrow {\partial_0} \square A_\mu (z) ] } ・・・(20)

 \qquad \displaystyle{ a^{\dagger}_\mu (k) \equiv i (2 \pi)^{-\frac{3}{2}} \theta(k_0) \int d^3 z \; 
 [\delta(k^2)e^{-i k \cdot z} \overleftrightarrow {\partial_0} A_\mu (z) + \delta'(k^2) e^{-i k \cdot z} 
 \overleftrightarrow {\partial_0} \square A_\mu (z) ] } ・・・(21)

 \qquad \displaystyle{ b(k) \equiv -i (2 \pi)^{-\frac{3}{2}} \theta(k_0) \delta(k^2) \int d^3 z \; e^{i k \cdot z} \overleftrightarrow {\partial_0} B(z) } ・・・(22)

 \qquad \displaystyle{ b^\dagger (k) \equiv i (2 \pi)^{-\frac{3}{2}} \theta(k_0) \delta(k^2) \int d^3 z \; e^{-i k \cdot z} \overleftrightarrow {\partial_0} B(z) } ・・・(23)

 ところで、これまではゲージ場 A_\mu (x) を下式(24)で表現してきたが、電磁場の明白に共変的な量子化ランダウゲージのB場形式(B場と補助条件)を採用するという観点を明確にする上で、今後は上式(18)に置き換えた方が良いのかもしれない。どうするかは気長にじっくりと考えていきたい。

 \qquad \displaystyle{ A_\mu (x) = \int \frac{d^3 \mathbf{k}}{\sqrt{(2\pi)^3 2 \omega_k}} \sum_{\lambda=0}^3 \{ a (\mathbf{k}, \lambda) \epsilon_\mu (\mathbf{k}, \lambda) e^{-i k \cdot x} + a^\dagger (\mathbf{k}, \lambda) \epsilon_\mu (\mathbf{k}, \lambda)^* e^{i k \cdot x} \} } ・・・(24)

 なお、ランダウゲージのB場形式による電磁場の明白に共変的な量子化を中西襄先生の「場の量子論」を用いて自由場を中心にこれまで勉強し、理解できているかどうかは怪しいが、なんとか読み終えた。ランダウゲージのB場形式では、横波光子2つは正ノルムで物理的状態、スカラー光子はゼロノルムで物理的状態、縦波光子は負ノルムで非物理的状態となっており、グプタ・ブロイラー形式よりもすっきりとしていて自然である。なお、クーロン力を考えるにはスカラー光子が関係するので原則的にはランダウゲージのB場形式の理解が必要だが、横波光子だけを扱う場合には近似的にクーロンゲージで間に合うのでどのゲージを使うかは対象に応じて使い分ければ良いのではないかという気が今はしてきている。クーロンゲージでは、スカラーポテンシャル \phi は非局所性を示して問題があるが、ベクトルポテンシャル \mathbf{A} だけをみれば局所性を示していて問題が無いからだ。そういう視点も踏まえて、電磁気学や量子光学の本に再び挑戦しようと思う。読み返す度に見方が変わっていくような気がして、さらにそういうことかといった新たな発見があったりして興味深く感じる。。。