ゲージ場と光子のPT図及びΩT図の関係(仮想光子追加)

 今回は、光子のPT図とゲージ場 A_\mu (x) の関係に、さらに仮想光子も加えて説明する。さらに、光子のΩT図も併せて説明する。なお、電磁場の明白な共変的量子化について、ランダウゲージを採用しているのはこれまでと同様である。

 ゲージ場 A_\mu (x) は横波、縦波、スカラー波という偏極成分に分解すると次式で表される。

 \qquad \displaystyle{ A_\mu (x) = \int \frac{d^3 \mathbf{k}}{\sqrt{(2\pi)^3 2 \omega_k}} \sum_{\lambda=0}^3 \{ a(\mathbf{k},\lambda) \epsilon_\mu (\mathbf{k},\lambda) e^{-i k \cdot x} + a^\dagger (\mathbf{k},\lambda) \epsilon_\mu (\mathbf{k},\lambda)^* e^{i k \cdot x} \} }

ここで、 k \cdot x = k^\mu x_\mu = \omega_k t - \mathbf{k} \cdot \mathbf{x} で、 k^\mu = (\omega_k,-\mathbf{k}), \; x_\mu = (t,\mathbf{x}) である。上式で \epsilon_\mu (\mathbf{k},\lambda) は偏極ベクトルで、 \lambda=1,2 が横波モード、 \lambda=3 が縦波モード、 \lambda=0スカラーモードである。上式から明らかなように、ゲージ場 A_\mu (x) の波動は、光子(光子波)であり、正ノルムの物理的状態である横波とゼロノルムの物理的状態であるスカラー波と負ノルムの非物理的状態である縦波とから構成される。なお、光子は素励起情報そのものであって、エネルギーではない。

 次に、光子の場図表現について説明する。

光子のうち実光子のPT図は、下記のとおりである。

実光子のPT図

実光子のPT図では、双子世界のうちの正世界の赤矢印が正ノルムの横波( \lambda=1,2 )、反世界の青矢印が負ノルムの縦波( \lambda=3 )、赤矢印と青矢印のつなぎ目がゼロノルムのスカラー波 \lambda=0 )を表現している。すなわち、1つの光子は横波部分、スカラー波部分、縦波部分から構成される。人間は正世界の横波部分を認知することができる。

また、光子のうち1光子状態の実光子( \Omega=\frac{3}{2} \omega )のΩT図は、下記のとおりである。

実光子のΩT図

なお、光子はボーズ統計に従い、同じ状態が複数個となることが許容されているので、 n=2,3,\cdots となってもよい。

 次に、光子のうち仮想光子( \Omega=\frac{1}{2} \omega )のPT図は、下記のとおりである。

仮想光子のPT図

仮想光子( \Omega = \frac{1}{2} \omega )のPT図では、双子世界のうちの正世界の赤矢印が正ノルムの横波( \lambda=1,2 )に対応するが、点線で表示されているとおり、正世界に存在していながら見えなくなっている。正ノルムの横波が見えなくなっているため、仮想光子を人間が認知できない。なお、反世界の青矢印が負ノルムの縦波( \lambda=3 )、赤矢印と青矢印のつなぎ目がゼロノルムのスカラー波 \lambda=0 )を表現している。すなわち、1つの仮想光子はスカラー波部分、縦波部分及び横波部分から構成されいるが、横波部分は見えなくなっている。なお、横波部分が正世界に存在していても見えないのは角振動数が 1 \omega に達していないため(実光子1個分のエネルギー \hbar \omega に達していない)と考えている。

また、光子のうち1光子状態の仮想光子( \Omega=\frac{1}{2} \omega )のΩT図は、下記のとおりである。

仮想光子のΩT図

仮想光子は真空ゆらぎとしてΩT図が示すように振動しているが、PT図に示すように正ノルムの横波が見えなくなっているため、人間は仮想光子を認知できない。ただし、横波も角振動数 \frac{1}{2} \omega で振動しており、確かに正世界に存在している。電荷間に働くクーロン力は、仮想光子のスカラー波部分が関与しており、仮想光子のキャッチボールという表現がされる所以である。

 以上のように、ゲージ場の波動と光子のPT図及びΩT図とは対応しており、PT図はゲージ場の波動である光子(光子波)を、ΩT図は光子の振動状態を表現している。

 なお、偏光については、本投稿と同日の投稿で、ゲージ場 A_\mu (x) の波動の複素線形結合で式表現できることを説明したとおりである。