初心に返って光とは何か:光学遷移の自然幅の古典モデル

 2024-04-24の投稿「量子場光学での1光子レベルの光波束の発生イメージ2」で光学遷移で指数的に減衰して励起原子が基底状態の戻ることで自然幅で発光する光源について少し触れた。これは光学遷移の自然幅の古典モデルでその波数分布は Lorentz 分布となる。

 光学遷移で発光した1光子レベルの波束は進行方向を +x として、次のような指数的に減衰する振動波形と考えられる。すなわち、簡単のために空間について1次元で考えるものとする。この指数的な減衰は励起状態の原子が基底状態に戻る緩和時間 \tau と関係していて原子の緩和現象は次式で表現される。

 \qquad \displaystyle{ I = I_0 \; exp (- \frac{t}{\tau}) }

これを光波束との形状として示すと下図のように指数的に振動する波形となる。

1光子れベルの光波束の伝搬のイメージ図

そして、この波束の波数分布は Fourier 変換により求まるが、 Lorentz 分布となる。すなわち、波数が Lorentz 分布に従って少しずつ異なる平面波を重ね合わせる光波束をイメージすることになる。

 なお、一般的には波束は Gauss 分布を採用するのが通常のようだ。これは Fourier 変換しても Gauss 分布が維持されて取扱いの点で便利ということのようだ。次のような Gauss 波束となる。また、気体中のランダムに運動する原子で散乱されると Doppler シフトが生じて線幅が自然幅よりも拡がると共に同様の Gauss 分布となる。ただし、散乱回数が少ないと上の波形と下の波形の中間の波形になると思われる。

光のGauss波束の伝搬のイメージ図

 なお、量子場光学においては、1光子レベルの光波束は光源での光学遷移による発光を物理的にイメージできる指数的に減衰する光波束を敢えて採用したい。気体中のランダムに運動する原子で散乱された光波束は位相情報もランダムな影響を受けてしまっていて上図のようなきれいな Gauss 分布の振動波形とはならないと考えられるからだ。さらに言えば、その Gauss 分布様となった光波束はアンサンブル平均の結果となるので、量子場光学で採用するには適切とは思えないからだ。

 そして、これまで下記のような図で空間についての3次元の光波束を表現してきたが、上記の内容を反映させて今回修正したい。

自由光子場の光波束のイメージ図

修正した光波束のイメージ図を下記に示す。

自由光子場の光波束のイメージ図

このイメージ図であれば、光源の物理的イメージと合致してわかり易くなったように思うがどうだろうか。そして、この1光子レベルの光波束は波数が Lorentz 分布に従って少しずつ異なる平面波を重ね合わせて構成されることになる。なお、自由光子場は分散が無いので光波束の形状は変わることなく伝搬していく。これなら、すっきりと思うがどうだろうか。。。

今回は Jupyter \; notebook 上で python matplotlib モジュールを用いて図作成を行うと共に、量子場光学における1光子レベルの光波束のイメージを明瞭化したつもり。。。