量子場光学の時空概念

 量子場光学では特殊相対論に対応するべく相対論的不変性( Poincar \acute{e} 不変性)を満足するために、正世界(plus-verse)と負世界(minus-verse)とからなる双子世界(twin verse)を導入した。

 光円錐の双子世界時空図は、表側が正世界で裏側が負世界と二重構造となっている。なお、光円錐において、時間的領域が正定値計量で空間的領域が負定値計量で、光子は光的である45°の世界線上を移動する点は一般的な時空図と同じである。量子は素励起情報の波動という量子波であるとし、素励起情報にはエネルギー運動量ベクトル p_\mu という概念はなく代わりに k_\mu = \frac{p_\mu}{\hbar} で定義される4次元波数ベクトル k_\mu が含まれる。さらに、双子世界時空図の時間的領域を伝搬していく量子を詳細に表現するために、量子が存在する時空点での量子の場図表現として、量子のPT図とΩT図を提案している。量子の場図表現は双子世界時空図の特定の時空点で時空図平面に垂直な方向を断面的に表示したもので場図表現の右側が時空図の表側の正世界を意味し場図表現の左側が時空図の裏側の負世界を意味している。

 以下に、双子世界時空図と実光子及び仮想光子のそれぞれのPT図とΩT図を示す。

双子世界時空図
実光子のPT図
実光子のΩT図
仮想光子のPT図
仮想光子のΩT図

 次に、真空エネルギーの解釈において、 Lorentz 不変性が近似的に成立し、 P^\mu |0> = 0 と関係する並進不変性と一緒になって近似的に相対論的不変性( Poincar \acute{e} 不変性)が要請されると考えて、並進不変性も瞬時でみれば破れることが可能であるがある時間幅で平均すれば0とみなせる近似ができ、時空で積分すればきっちりと0となるという仮説を提案した。さらに言えば、正世界(plus-veres)に光子の生成を意味する正値1を負世界(minus-verse)に光子の消滅を意味する負値ー1を付与して光子の生成と消滅の繰り返しを時空の積分と考えると次のようになる。これは無限交代等比級数での解析接続である。

 \qquad \displaystyle{ "1-1+1-1+ \; \cdots " = \frac{1}{2} }

 \qquad \displaystyle{ "-1+1-1+1- \cdots" = - \frac{1}{2} }

双子世界(twin verse)において、光子場の真空エネルギーとしては時空で積分すると0となるが、光子の生成と消滅を無限回まで繰り返すと人間が認知できる正世界(plus-verse)では真空エネルギーは \frac{1}{2} \hbar \omega となり、光子の消滅と生成の順で無限回まで繰り返す負世界(minus-verse)での真空エネルギーは - \frac{1}{2} \hbar \omega となる。そして、場の量子論では真空エネルギーは空間で積分すると発散することになっているが、自仮説の量子場光学では正世界の正エネルギーと負世界の負エネルギーとで相殺されて発散することはない。

 以上のように考えれば、場の量子論においてもその略近似である自仮説の量子場光学でも、正エネルギーと負エネルギーの存在のもとで最低状態とはエネルギーの絶対値で判断するものとし真空場の最低エネルギーが0であるという説明が可能となって、c数項を無視して再定義という不思議なことをしなくても相対論的不変性( Poincar \acute{e} 不変性)の要請を満足することができる。

 次に、場と双子世界時空図との関係を説明する。場には自由場と束縛場とがある。例えば、束縛電子場は、原子に束縛された電子が存在する場である。自由光子場は、光子が素励起情報の波動として自由に伝搬する場である。

 原子に束縛された励起電子が光学遷移により出射する光を「1光子レベルの光波束」と呼ぶことを提案した。そのイメージ図を下図に示す。

1光子レベルの光波束のイメージ図

この1光子レベルの光波束を光子波、さらには略して光子と呼ぶこともある。横波の平面波を進行方向に並べて重ねた構成をしており、 Fourier 変換すると波数の少しずつ異なって拡がりを持っていていわゆる縦モードを構成している。一方、進行方向と垂直な平面方向は横モードに対応していて、光学系で容易に形状を変更できる。なお、縦モードについても横モードほど自由自在ではないが、例えば干渉フィルタや分光器等で変形することができる。

 次に、1光子レベルの光波束によるダブルスリット干渉実験のイメージ図を下図に示す。

ダブルスリット光学系のイメージ図

発光源の束縛電子場の原子に束縛された励起電子(黄色)が光学遷移すると、その電子を中心に光子の素励起情報の波動が1光子レベルの光波束として光学遷移した電子を中心にして自由光子場を光速で同心円状に拡がっていく。発光源から十分に離れた位置では光子の素励起情報の波動は波数が少しずつ異なる複数の平面波で構成された波束と近似することが出来る。これが1光子レベルの光波束である。自由光子場において、光子の素励起情報の波動はダブルスリットにおいて両方のスリットを通過し、受光素子の表面において干渉縞形状の確率分布を形成する。その意味では、光子の素励起情報の波動は確率波と呼んでも良い。受光素子の束縛電子場において受光素子を構成する原子に束縛された電子の1つが励起される電子(黄色)として干渉縞状の確率分布に依存して確率的に選択される。これは、沢山の枯葉のうちの1枚の枯葉が風に揺られて落ちるのに似ている。選択された電子(黄色)は、光子の素励起情報に基づいて励起される。これが受光素子の表面でスポットとなる理由である。なお、エネルギーの移動は場と場との相互作用で生じ、自由場を伝搬するのは素励起情報の波動であってエネルギーではない。発光源の1つの電子(黄色)の光学遷移のエネルギー \hbar \omega が受光素子の1つの電子(黄色)の励起エネルギー \hbar \omega となる。すなわち、エネルギー \hbar \omega は、発光源の束縛電子場から1光子レベルの光波束が伝搬する自由光子場との間、及び、その自由光子場と受光素子の束縛電子場の間で移動する。1光子レベルの光波束が次々に自由光子場を伝搬すると、受光素子の表面のスポットが干渉縞形状の確率分布に基づいてスポットの数が増加していき、多数のスポットで形成された干渉縞が形成されることになる。

 以上の光のダブルスリット干渉の説明をステップで言い換えると、発光源が存在する時空点での束縛電子場から自由光子場へのエネルギー \hbar \omega の移動するステップ、自由光子場での光子の素励起情報の波動が双子世界時空を光速伝搬するステップ、伝搬先の受光素子が存在する時空点での自由光子場から束縛電子場へエネルギー \hbar \omega が移動するステップとなる。場と場の相互作用は局所性の点から同一時空点でしか起こらず、この相互作用を通じてエネルギー移動が生じる。

 以上のように、自仮説の量子場光学で導入した双子世界時空の概念は、量子光学が非相対論的であるのに対して特殊相対論に対応するための要諦であり、場の量子論とも相違する自仮説の一番の特徴である。これがとんでもかどうかは私にはわからないが、不都合が出てくるまではこの線で進めたい。。。