量子場光学での1光子レベルの光波束の発生イメージ

 量子場光学では、原子に束縛された束縛電子場の励起電子が光学遷移により1光子レベルの光波束を光子の素励起情報の波動として自由光子場に出射するとしているが、その際の光学遷移をどのように考えているかは下図の程度で殆ど説明していなかった。

1光子レベルの光波束の伝搬のイメージ図

 今回はもう少し詳しく説明することを試みたい。

J.J.Sakurai著の日本語訳「上級量子力学第1巻」のp51に原子が励起状態Aから低エネルギー状態Bへ遷移する際の遷移頻度 \omega_{d \Omega} について次式となることが記載されている。なお、 \alpha = 1,2 は偏光状態を表す。

 \qquad \displaystyle{ \omega_{d \Omega} = \frac{2 \pi}{\hbar} \frac{e^2 \hbar}{2 m^2 \omega V} \left| \sum_i < B | e^{-i \mathbf{k} \cdot \mathbf{x}_i} \epsilon^{(\alpha)} \cdot \mathbf{p}_i | A> \right|^2 \frac{V \omega^2 d \Omega}{(2 \pi)^2 \hbar c^3 }  } ・・・(1)

ここで、角振動数 \omega はエネルギー保存条件 E_A = E_B + \hbar \omega を満たす。規格体積 V は約分により消える。

さらに、単純化して水素様原子を想定し、原子内電子の一つだけが自発放射に関与すると仮定し、 i に関する和を省くと次式が得られる。

 \qquad \displaystyle{ \omega_{d \Omega} = \frac{e^2 \omega}{8 \pi^2 m^2 \hbar c^3} \left| < B | \mathbf{p} | A > \cdot e^{(\alpha)} \right|^2 d \Omega } ・・・(2)

なお、 \mathbf{p}^2 \mathbf{x} との交換関係を使用して < B | \mathbf{p} | A > を書き直すことができる。

 \qquad \displaystyle{ < B | \mathbf{p} | A > = \frac{i m (E_B - E_A)}{\hbar} < B | \mathbf{x} | A > = -i m \omega \mathbf{x}_{BA} } ・・・(3)

さらに変形していくと次式が得られる。

 \qquad \displaystyle{ \omega_{d \Omega} = \frac{e^2 \omega^3}{8 \pi^2 \hbar c^3} |\mathbf{x}_{BA}|^2 cos^2 \Theta^{(\alpha)} d \Omega } ・・・(4)

ここで、

 \qquad cos \Theta^{(1)} = sin \theta cos \phi, \quad cos \Theta^{(2)} = sin \theta sin \phi ・・・(5)

なお、2つの偏光状態に関する和は、次式の因子を与える。

 \qquad cos^2 \Theta^{(1)} + cos^2 \Theta^{(2)} = sin^2 \theta cos^2 \phi + sin^2 \theta sin^2 \phi  = sin^2 \theta ・・・(6)

自発放射の遷移頻度分布はドーナツ形状となっている。これは古典電磁気学での双極子放射での角度分布と同様である。

 以上から類推して量子場光学に当てはめて考えると、原子に束縛された束縛電子場の励起状態Aの電子は低エネルギー状態Bに光学遷移する際に、ドーナツ形状の遷移頻度分布に従って1光子レベルの光波束を自由光子場に出射するということになる。そして、上図においては、受光素子の方向へ平面波の波束として出射された1光子レベルの光波束が受光素子の束縛電子場に伝搬するということになる。これが、量子場光学での自発放射のイメージである。

 こんなふうに自仮説の量子場光学では考えているが、どうだろうか。