量子場光学とウィグナー関数の関係

 2024-01-17の投稿「量子場光学と調和振動子近似の関係2」で、量子光学で登場する調和振動子近似を量子場光学でどのように考えるかを検討してみた。そして、それなりの関係性が確認出来て質量の無い光子であっても調和振動子近似は近似という点で許容できるような気がしてきた。

 一方、量子光学、特に連続量量子光学で多用される Wigner 関数はどうだろうか。この点を考える前に、連続量量子光学の単一光子状態 |1> とは光子数をカウントするといつでも1であって、平均光子数が1の状態であるのに対し、場の量子論を考慮した量子場光学での1光子状態 |1> とは1光子の場の状態である。連続量量子光学の単一光子状態 |1> には粒子のイメージは全く無くまさに電磁波という波動を扱うものであり、光子を質点として扱う離散量子光学と比較するならば場の量子論を考慮した量子場光学との相性が良さそうに思える。しかしながら、それでも連続量量子光学は光子の集団の挙動を統計的に扱う理論であるから、場に多数の光子が存在していて位相は不定となりあらゆる位相を持った多数の波動の重ね合わせを統計的に平均すると1光子というようなものだ。

 それでは、連続量量子光学の真空状態 |0> と量子場光学の場の真空状態 |0> との関係はどうなっているのだろうか。もしかして、近似として、連続量量子光学は量子場光学における双子世界のうちの正世界だけに着目した理論という考え方が出来るのだろうか。連続量量子光学が正世界だけに着目しているとすると、連続量量子光学の真空状態 |0> Wigner 関数表示が正値だけとなるのと整合する。しかし、連続量量子光学の 単一光子状態 |1> Wigner 関数表示では正値と負値とが共存する。この点は連続量量子光学は調和振動子近似との相性が良く、量子場光学で正世界だけに着目すると考えるならば少なくとも今のところ説明が困難である。一方で、量子場光学と調和振動子近似とは2024-01-17の投稿「量子場光学と調和振動子近似の関係2」で述べたように相性はそれほど悪くない。

 うーん、なかなか難しい。。。 Wigner 関数を量子場光学のツールとして取り込むことはなかなか難しそうだ。。。量子場光学が単独光子も含めて光子の場での状態に着目するのに対して、連続量量子光学は光子の集団の統計的性質に着目していると考えるなら、 Wigner 関数が意味するところを連続量量子光学では扱えても現状の量子場光学で扱えないのは当然かもしれない。ただし、量子光学の光子は量子場光学での光子ではなくて1光子レベルの光波束と対応する。 Wigner 関数は一般化された位置 q と運動量 p との位相空間で表示された関数であることから、自由光子場を伝搬する1光子レベルの光波束の統計的性質を表現しているというふうに考えられないだろうか。そうであれば、場の量子論を考慮しても当てはまるものが無いのは当然である。 Wigner 関数の数式フォローは以前に行ったがその理解は不十分である。もっと Wigner 関数の意味を勉強する必要がありそうだ。。。

 なお、今更ながらとんでもない勘違いに気が付いた。以前の各種の量子論の位置付けで、連続量量子光学は非相対論的としていた。しかし、連続量量子光学がマクスウェル方程式をベースにする以上、場の理論であり明白な共変か否かの違いはあるものの少なくともベクトルポテンシャルは完全に相対論的なのだ。有限自由度、調和振動子近似、不確定性関係等、量子力学に依存する点が多いが、場の量子論と共通の部分も多い。だから、量子場光学と連続量量子光学の相性が良いように感じるのかも。。。とんでもないうっかりだった。。。