量子場光学の大幅改訂

 今回は、量子場光学の大幅改訂を考える。真空エネルギーをどう考えるかから出発して、相対論的不変性( Poincar \acute{e} 不変性)の要請で P^\mu |0> = 0 となる点とどう整合させるか、という問題点に対応するためである。そして、未知の統一理論との関係も気になるところである。2023-11-22の投稿である「各種の量子論の位置付け雑感3」では、量子論の階層について以下のように9つに分類している。

量子力学:粒子の量子論、統計処理、過去から未来への時間発展、非相対論的、 Euclid 空間

②離散量子光学:粒子の量子論、統計処理、過去から未来への時間発展、非相対論的、 Euclid 空間

③TSQM:粒子の量子論、統計処理、時間対称的な時間発展、非相対論的、 Euclid 空間

④連続量量子光学:場の量子論、過去から未来への時間発展、非相対論的、 Euclid 空間

⑤相対論的量子力学:粒子の量子論、特殊相対論、過去から未来への時間発展、 Zitterbewegung 、カイラルスピノール、 Minkowski 時空

⑥量子場光学(自仮説):粒子と場の量子論、時間対称的な時間発展、特殊相対論、 Zitterbewegung 、カイラルスピノール、 Minkowski 時空、自由場、束縛場

⑦場の量子論Ⅰ:経路積分量子化、粒子と場の量子論、特殊相対論、 Feynman 図、過去から未来への時間発展、 Minkowski 時空、散乱問題、S行列

⑧場の量子論Ⅱ:正準量子化、場の量子論、特殊相対論、過去から未来への時間発展、漸近場、相互作用場

⑨未知の統一理論:場の量子論、一般相対論、量子 Einstein 重力、過去から未来への時間発展、ウルタイム、正準量子化

 ここで、まずは、量子場光学の構築方針として、真空エネルギーは存在するが0であるとしたい。ただし、常に0とするのか、ある時間幅でみれば0とみなせるとするかで迷いがある。仮想量子(仮想粒子)の生成・消滅と真空エネルギーの関係をどのように考えるかも気になっている問題だからだ。そして、未知の統一理論としては量子 Einstein 重力による重力場の共変的正準量子論を自仮説の構築に採用したい。これは場の量子論が電磁場の明白な共変的量子化を採用したことと整合させるためである。そして、量子 Einstein 重力では、場の粒子論の相対論的不変性は並進が自発的に破れていない場合にGL(4)の自発的破れの結果現れる二次的対称性であるとなっている。そして、場の量子論の相対論的不変性は絶対的に成立するものではなく重力場の量子補正を無視した近似において正当化されるらしい。場の量子論は量子アインシュタイン重力による共変的重力理論の近似とするならば、量子場光学は場の量子論の近似である。場の量子論では Lorentz 不変性が近似的に成立し、 P^\mu |0> = 0 と関係する並進不変性と一緒になって近似的に相対論的不変性( Poincar \acute{e} 不変性)が要請されるとする。なお、並進不変性は明白に破れてしまうと法則が時空点によって異なってばらばらになってしまうのでここでは考えない。ただし、宇宙の初期には並進不変性も破れていてエネルギー保存則が成り立たずに無から宇宙が生まれたという考え方が有るかもしれないようだ。そして、量子力学は場の量子論の近似であり、量子光学は量子場光学の近似とする。このようなスタンスで考えたい。そうであれば、真空エネルギーは常に0である必要はなく、ある時間幅で平均すれば0とみなせる近似と考えても良いような気がする。これはたぶん中西襄先生の考え方とは相違するような気もするが、並進不変性も瞬時でみれば破れていると考えるのだ。そうであれば、量子場光学では量子場のエネルギーにおいて、仮想量子の生成で \frac{1}{2} \hbar \omega の正エネルギーとなり仮想量子の消滅で - \frac{1}{2} \hbar \omega の負エネルギーとなる。ただし、ある時間幅で平均すれば仮想量子の生成と消滅の繰り返しにおいて相殺されて真空エネルギーは0とみなせるという近似が成立する。さらに言えば、時空で積分すれば場の真空エネルギーは近似でなくきっちりと0となる。かなりご都合主義な感があるが、ともかくこのような考え方で試行したい。以上のように中西襄先生の論説で知ったことも取り入れて私の理解した範囲の量子 Einstein 重力を少なくとも当面は採用することとした。なお、真空エネルギーを近似的に0とみなす論理は私が勝手に考えたもので論説の影響ではないので、かなり怪しい考え方かもしれない。もちろん、場の量子論では瞬時でも P^\mu |0> = 0 が正確に成立するという考え方も有り得るが、そうなると真空エネルギーは存在しないのと同じことになってしまう。自仮説としてはそのような考え方はとらないで進め、今後明らかな不都合が見つかったらその時点で再考することとしたい。

 また、量子場光学は相対的で確率的な理論である。相対論的には、場の量子論で電磁場の量子化に明白な共変的量子化を導入している。さらに、確率論的には、量子の素励起情報の波動という概念を導入している。これは情報に基づく確率波ともいえるようなものである。そして、複数の確率波が遭遇すると干渉により確率分布が形成される。さらに、波動はキャリア(運び手)という意味もある。量子の素励起情報が波動として自由場を伝搬する。なお、素励起情報には縦モードの情報だけでなく横モードの情報も含まれる。縦モードは光波束の角振動数の拡がり具合であり、量子の発生源に強く依存する。横モードは光波束の進行方向と垂直な平面での拡がり具合であり、自由場に含まれる光学系により比較的容易に形状を変更可能である。

 ところで、以前に導入した正世界と反世界とからなる双子世界は、私自身の当初の思惑は量子は正世界と反世界を行き帰りしており、正世界は不定計量の正定値に対応して正の確率と正のエネルギーを生み、反世界は不定計量の負定値に対応して負の確率と負のエネルギーを生むという期待であった。しかし、量子の場図表現において電子のPT図を考えた場合、P軸方向の振動は横波電子に対応し、T軸方向の振動は質量と関係し縦波電子に対応するという考え方を私は非常に気に入っている。そして、電子の場合は質量が有るために負ノルムの電子が存在しないのだ。そしてこれまで、光子の場図表現と電子の場図表現とで考え方に齟齬があったにもかかわらずこれまでほったらかしになっていた。そしてこの機会に、光子のPT図も電子の考え方に整合させることを優先することとしたい。そして、量子の場図表現は素直に量子の素励起情報の波動を図表現するものとする。そうなると、P軸方向の振動は横波光子に対応し物理的状態なので図示でき、T軸方向の振動は縦波光子が対応するが非物理的状態なので図示できないとすべきである。そして、このように考えるなら光子のPT図でのP軸方向の振動が正世界の横波光子と反世界の縦波光子とからなると考えるのには無理があって見直すべきとの考えに至ったのだ。

 そこで、思い切ってPT図及びΩT図もこの機に改訂したい。そこでは名称の変更も行い、改訂した双子世界は正世界と負世界とからなり、正世界は光子の素励起情報の波動である確率波が光子生成状態(正値)の世界で正のエネルギーを生み、負世界は光子の素励起情報の波動である確率波が光子消滅状態(負値)の世界で負のエネルギーを生むとだけ定義する。確率波が光子生成状態(負値)であるとは確率が負であるという意味ではない。確率波は波動であって正値と負値を持つが、確率波が形成する確率分布はあくまで正の確率の分布と考えている。そして、正値は量子の生成状態、負値は量子の消滅状態という関係を持つと考えている。なお、確率波に負値の部分があっても干渉により形成された確率分布では正の確率となることが可能である。そして、確率波が負値であることやエネルギーが負であることを認めるのは通常はトンデモかもしれないが、虚数や負定値計量を認めるなら確率波が負値となることや負エネルギーを認めても良いではないかという勝手な心情である。そして、負エネルギー及び負値の確率波を許容した双子世界の導入により、⑤相対論的量子力学での Dirac の海が違った形で復活することになる。双子世界では最低エネルギーは0となるからだ。そして、不定計量によるゴーストを導入しても量子場が不安定にはならない気がする。

 なお、正直なところ、まだ量子の素励起情報の波動である確率波の姿が明瞭となったとは言えない。この点が今後の量子場光学の構築の注力すべき事項となるだろう。そして、量子の場図表現についても、今は双子世界を確率波の正値(量子の生成状態)と負値(量子の消滅状態)との2つの世界で構成したが、他のアイデアとして、素励起情報の波動の Fourier 展開された式の生成演算子側の項に対応した正世界と消滅演算子側に対応した負世界という考え方や、正世界と負世界とで確率波が複素共役の関係にあるとか、いくつかの代替候補が考えられる。ただ、焦っても良いアイデアは出てこないのでのんびりとじっくりと考えていくこととし、当面は今の内容で進めたい。。。「存在は全ては光」への道は長いのだから。。。まずは、色々な本を読んで自分の考えを整理しながら進めていきたい。

 場の量子光学の構築方針として、以上のような大幅な改訂を今回思い切って勝手に宣言して進めたい。もちろん、また不都合がみつかったら節操も無く逆戻りも含めて変更することになるのだが、今はかなりすっきりしていい気分だ。。。ただ、不定計量の世界を正世界と反世界とで場図表現するという思惑は今のところ断念するしかない。ただし、良いアイデアを思いついたら負ノルムの世界を表す反世界を復活させることもやぶさかではない。。。