各種の量子論の位置付け雑感

 前回にTSQM(時間対称的な量子力学)を話題にしたが、色々な量子論の中での位置付けを自仮説の量子場光学も含めて考えてみた。その結果、次のような見解をなんとか強引に作り上げた。下に行くほど近似の精度が高くなる。ただし、それぞれに階層性があって得意な対象が異なる。

量子力学:粒子の量子論、統計処理、過去から未来への時間発展、非相対論的、ユークリッド空間

②離散量子光学:粒子の量子論、統計処理、過去から未来への時間発展、非相対論的、ユークリッド空間

③TSQM:粒子の量子論、統計処理、時間対称的な時間発展、非相対論的、ユークリッド空間

④連続量量子光学:場の量子論、過去から未来への時間発展、非相対論的、ユークリッド空間

⑤相対論的量子力学:粒子の量子論、特殊相対論、過去から未来への時間発展、Zitterbewegung、カイラルスピノール、ミンコフスキー時空

⑥量子場光学(自仮説):粒子と場の量子論、時間対称的な時間発展、特殊相対論、Zitterbewegung、カイラルスピノール、ミンコフスキー時空、自由場、束縛場

⑦場の量子論Ⅰ:経路積分量子化、粒子と場の量子論、特殊相対論、ファインマン図、過去から未来への時間発展、ミンコフスキー時空、散乱問題、S行列

⑧場の量子論Ⅱ:正準量子化、場の量子論、特殊相対論、過去から未来への時間発展、漸近場、相互作用場

⑨未知の統一理論:場の量子論、一般相対論

 一応、並べてみたものの、すっきりとしていないところも多い。

 この中で、時間対称的な時間発展を取り入れているのは、③TSQMと⑥量子場光学の2つである。③TSQMの場合、質量の無い光子のダブルスリット干渉実験に対して弱測定を行うことで、弱値が -1 という存在確率としては考えにくい結果が得られたことを以前の投稿で述べたが、③TSQMの弱測定自体が意味が無いという訳ではない。弱値を確率と考える点に無理があり、それならば弱値の物理的意味を解明することが重要と考えられている。以前の投稿で⑧場の量子論Ⅱにおける負ノルムの非物理的状態に似ているといったのはその点である。なお、時間対称的な時間発展ということは、時間に逆行する動きを許容することであり、時間の矢の問題をどのように考えるかが課題である。

 また、⑦場の量子論Ⅰは、「場の量子論」と言いながら、経路積分の経路は粒子の経路であり、ファインマン図は粒子の動きを描いている。その意味では①量子力学に近い。その意味で場の量子論の本道は⑧場の量子論Ⅱではないかと考えている。

 また、①から④は、非相対論的でユークリッド空間で量子論を扱う。⑤から⑧は、特殊相対論が適用され、ミンコフスキー時空で量子論を扱う。光子は質量が無いので常識から考えて相対論的に扱う必要があり、それでも①から④で扱う場合はそれなりの制約があるはずである。電子や中性子であれば質量があるので低エネルギーであれば、①から⑧のいずれでも扱うことができるだろう。

 また、Zitterbewegungに着目しているのは、⑤相対論的量子力学と⑥量子場光学(自仮説)であり、⑧場の量子論Ⅱでの縦波波動に関係していると思われるのだが、そのような議論を私は見たことがない(知らないだけ?)。質量の無い光子の場合は、非物理的状態で負ノルムの縦波光子があるが、質量の有る電子の場合は、縦波は物理的状態なのに縦波に着目した議論が無いのは私には不可思議である。ただし、Zitterbewegungは⑦場の量子論Ⅰや⑧場の量子論Ⅱでは縦波波動とは呼んでいないが、⑤相対論的量子力学ではカイラルスピノールのスピン左巻き状態 \psi_L とスピン右巻き状態 \psi_R の繰り返しという混合状態が対応しているとの考え方があるのでこれが縦波波動と対応している可能性がある。なお、⑥量子場光学(自仮説)の電子の場図表現ではPT図において正世界(normal-verse)の左回りの矢印が \psi_L に対応し、反世界(anti-verse)の右回りに見える左回りの矢印が \psi_R に対応しているものと考えている。そして、T軸方向の振動がZitterbewegungに対応する。すなわち、両方の階層に対応するようにしている。

電子のPT図

 以上、ごたごたと好き勝手なことを書いてきたが、それぞれの適用範囲と特徴を見据えて、自仮説の⑥量子場光学の構築に取り入れていければといつまでかかるか不明であるが、のんびりと勉強中である。

 なお、最終目標は、ブログの名称通りで、『存在は全てが光』なので、光だけにテーマを絞るつもりはない。ただ、今一番に注力したいのは『光とはなにか』である。