2023-06-21付で「量子もつれ光の解釈について」という投稿をしたが、今読み返してみると自仮説の量子場光学の解釈ではピンホールで取り出した光子1と光子2との素励起情報が同じなので特段不思議な点は思い浮かばないと言っているだけであり、正直なところ説明になっていない。そこで、今回、量子場光学による解釈について補足説明を行うことにした。これで説明になっているかどうか自信は無いが前回よりはわかり易いつもりだ。
以下では、自仮説の量子場光学で量子もつれの解釈を試みる。パラメトリック下方変換のタイプⅡの説明図を下に示す。
非線形光学結晶である例えばBBO結晶にポンプ光として1光子を照射すると、正常光(光子A:垂直偏光(V))と異常光(光子B:水平偏光(H))の光錐が生成される。すなわち、ポンプ光の1つの光子から光子Aと光子Bの2つの光子が生成される。両者の2つの交点にそれぞれピンホールを置くことで光子Aと光子Bとの重ね合わせによるそれぞれ光子1と光子2との2つの光子を取り出すことができる。そして、光子1と光子2とは量子もつれ(エンタングルメント)を成している。なお、ここで、光子と呼んでいるものは、自仮説によれば、光子波であり、正確には光子の素励起情報の波動を意味する。正常光及び異常光の光錐は素励起情報の波動が作る光錐である。さらに言えば、光子波は正確には1光子レベルの光波束であり、ゲージ場 の波動である。パラメトリック下方変換は非線形光学結晶を使って1光子系を2光子系とする点に特徴がある。
次に、量子もつれ光の同時検出系の説明図を下に示す。
ピンホール1から取り出した光子1の素励起情報は光子Aの素励起情報と光子Bの素励起情報とを重ね合わせたものであり、同様にピンホール2から取り出した光子2の素励起情報も光子Aの素励起情報と光子Bの素励起情報とを重ね合わせたものである。すなわち、光子1も光子2も素励起情報が同じである。これは、光子1及び2のいずれの素励起情報も光子A及びBの両方の素励起情報を含んでいるという意味である。なお、前回の投稿ではここで説明が終わってしまっていた。今回は続きを説明すると、光子1及び2の素励起情報の波動が検出器1及び2にそれぞれ伝搬して到達すると、検出器1及び2を構成する原子に束縛された電子がそれぞれ励起されることになる。ここで、検出器1及び2の出力を同時検出器で同時(同時刻)に到達した光子のみをカウントすることとする。その場合、光子1の素励起情報に含まれる光子Aの素励起情報に基づいて検出器1の原子に束縛された電子1が励起されたとすると、検出器2の原子に束縛された電子2は光子2の素励起情報に含まれる光子Bの素励起情報に基づいて励起される。逆に、光子1の素励起情報に含まれる光子Bの素励起情報に基づいて検出器1の原子に束縛された電子1が励起されたとすると、検出器2の原子に束縛された電子2は光子2の素励起情報に含まれる光子Aの素励起情報に基づいて励起される。ピンホール1及び2をそれぞれ同時(同時刻)に通って来る光子はこの2つの場合しか無い。ピンホール1に光子A及びBの両方が通過してしまって、ピンホール2を通過しない場合は、検出器1及び2の同時検出は起こらないので同時検出器ではカウントされない。ピンホール2の場合も同様に考えられる。その結果、検出器1で検出される光子1が垂直偏光(V)であれば検出器2で検出される光子2は水平偏光(H)というように、光子1及び2の偏光状態は互いに直交していることになる。今回の例は、1光子レベルの光波束が光子A及び光子Bと2つある2光子系の場合を説明した。なお、量子光学における同時検出測定においては、多数回測定を行い統計的に評価する。すなわち、多数の1光子レベルの光波束を取り扱うことになる。これは、片方のピンホールを両方の光子が通過し残りのピンホールを光子が通過しなかった場合を測定から除くために必要である。同時検出の時間幅を広く設定した場合は相関性が低下することになるものと思われる。
自仮説の量子場光学での量子もつれ光の解釈を、以上のように考えているのだがどうだろうか。補足程度のつもりが随分説明が長くなってしまった。ちょっとスッキリした気分だが、ただ、量子もつれ(エンタングルメント)の勉強を十分にした訳ではないので、今後、内容を見直すことがあるかもしれない。