量子もつれ光の解釈について5

 2024-02-18、すなわち今日の投稿「量子もつれ光の解釈について4」で、J.J.Sakurai(桜井純)著の日本語訳「上級量子力学第2巻」に記載の内容を読んで量子もつれについてすっきりとした。そこで、2023-09-24に投稿の「量子もつれ光の解釈について2」に書いた内容を読み直してみた。すると、その内容がおかしいことに気が付いた。以前の投稿内容ではダブルスリット干渉での考え方と矛盾するのだ。ダブルスリット干渉は1光子系で量子もつれ光は2光子系で考える必要がある。(3光子系以上もあるだろうがここでは考えない。)そこで、今回、節操も無く以前の投稿を早速見直してみることにした。これなら前回よりも納得できる内容である気がする。なお、自由光子場を伝搬する1光子レベルの光波束のことを光子波と呼び、敢えて自由光子場に存在する光子とは区別することにする。

 以下では、自仮説の量子場光学での量子もつれの解釈の見直しを試みる。パラメトリック下方変換のタイプⅡの説明図を下に示す。

パラメトリック下方変換タイプⅡ

非線形光学結晶である例えばBBO結晶にポンプ光として1つの光子波を照射すると、正常光(光子波A:垂直偏光(V))と異常光(光子波B:水平偏光(H))の光錐が生成される。すなわち、ポンプ光の1つの光子波から自由光子場を伝搬する光子波Aと光子波Bの2つの光子波が生成される。そして、自由光子場には光子Aと光子Bが存在することになる。光子波Aの光錐と光子波Bの光錐との2つの交点にそれぞれピンホールを置くことで光子波Aと光子波Bの素励起情報が足し合されたそれぞれ光子波1と光子波2との2つの光子波を取り出すことができる。そして、光子波1と光子波2とは量子もつれエンタングルメント)を成している。なお、ここで、光子波と呼んでいるものは、正確には光子の素励起情報の波動を意味する。正常光及び異常光の光錐は素励起情報の波動が作る光錐である。さらに言えば、光子波は正確にはゲージ場 A_\mu(x) の波動である。パラメトリック下方変換は非線形光学結晶を使って1光子系の自由光子場を2光子系の自由光子場に変換する点に特徴がある。したがって、2光子系の自由光子場には光子Aと光子Bとが存在する。自由光子場内の光子波の伝搬と自由光子場の光子の存在とを区別して考える必要があることに注意すべきである。

次に、量子もつれ光の同時検出系の説明図を下に示す。

同時検出光学系

ピンホール1から取り出した光子波1の素励起情報は光子波Aの素励起情報と光子波Bの素励起情報とを足し合わせたものであり、同様にピンホール2から取り出した光子波2の素励起情報も光子波Aの素励起情報と光子波Bの素励起情報とを足し合わせたものである。すなわち、光子波1も光子波2も素励起情報が同じである。これは、光子波1及び2のいずれの素励起情報も光子波A及びBの両方の素励起情報を含んでいるという意味である。そして、自由光子場は2光子系であって光子Aと光子Bとが存在する。光子波1及び2の素励起情報の波動が検出器1及び2にそれぞれ伝搬して到達すると、検出器1及び2を構成する原子に束縛された電子がそれぞれ励起されることになる。ここで、検出器1及び2の出力を同時検出器で同時(同時刻)に到達した光子のみをカウントすることとする。その場合、光子1の素励起情報に含まれる光子波Aの素励起情報に基づいて検出器1の原子に束縛された電子1が確率的に選択されて励起されたとする。これは自由光子場の光子Aのエネルギー及び運動量が束縛電子場の電子1に移動したことを意味する。すると、自由光子場には光子Bしか残っていない。したがって、検出器2の原子に束縛された電子2は光子2の素励起情報に含まれる光子Bの素励起情報に基づいて確率的に選択されて励起される。これは自由光子場の残された光子Bのエネルギー及び運動量が束縛電子場の電子2に移動したことを意味する。逆に、光子1の素励起情報に含まれる光子Bの素励起情報に基づいて検出器1の原子に束縛された電子1が確率的に選択されて励起されたとする。これは自由光子場の光子Bのエネルギーと運動量が束縛電子場の電子1に移動したことを意味する。すると、今度は自由光子場には光子Aしか残っていない。したがって、検出器2の原子に束縛された電子2は光子2の素励起情報に含まれる光子Aの素励起情報に基づいて確率的に選択されて励起される。ピンホール1及び2をそれぞれ同時(同時刻)に通って来る光子波は素励起情報としては光子波Aと光子波Bとの足し合わせとなって同じものなのだが、自由光子場には光子Aと光子Bの2つしか無い。したがって、束縛電子場の電子1が確率的に選択された時点で自由光子場の2つの光子のうちの1つはエネルギー及び運動量が電子1に移動することで消滅し、残りの光子しが自由光子場に存在しないことになるのだ。

 その結果、検出器1で検出される光子Aが垂直偏光(V)であれば検出器2で検出される光子Bは水平偏光(H)というように、もしくはその逆の関係というように、光子A及びBの偏光状態は互いに直交していることになる。もちろん、なお、量子光学における同時検出測定においては、多数回測定を行い統計的に評価する。すなわち、多数の光子波を取り扱うことになる。同じポンプ光の光子から変換された光子Aと光子Bとは同時に生成する。したがって、同時検出の時間幅を広く設定した場合はポンプ光の光子が同じとは限らないものが混ざることになり相関性が低下することになるものと思われる。

 自仮説の量子場光学での量子もつれ光の解釈を、以上のように見直してみたのだがどうだろうか。自由光子場内を伝搬する光子波と自由光子場の光子を区別することができて、以前よりずっとスッキリした気分だ。それでもまだ怪しげなことを書いているかもしれない。気がついたら修正することとし、今はすっきりで良い気分だ。。。