エネルギーの局在性と横モードについて雑感3

 2024-02-04の投稿『エネルギーの局在性と横モードについて雑感2』の続きである。

 J.J.Sakurai著の2冊の日本語訳「上級量子力学」を読み進めている。しかしながら、光子においてエネルギーを局在化するような力を示唆する記載は本の中では見つかっていない。これまで通りに、そして、下図に示したように、 \gamma 光子は確率的に原子核を選択すると考えるのが良さそうだ。自由光子場を伝搬する \gamma 光子の素励起情報の波動は1光子レベルの光波束として進行方向と垂直の横モードは光学系による拡がり具合の制御を除いて基本的には無限に拡がっている。

電子対生成のイメージ図

こうなるとやはり気になるのは、質量の有る電子の横モードはどう考えたらよいかである。北陸地域アイソトープ研究会誌第5号2003年の東北大鈴木厚先生による「ニュートリノ素粒子,宇宙,地球を探る」という特別講演の解説記事に電子対生成の泡箱写真が載っていたので、下図に示す。

電子対生成の泡箱写真

光の飛跡は見えないが、電子と陽電子の飛跡ははっきりと見え、横モードの拡がり具合はかなり細い。ここでは、磁場が画面と垂直方向に印加されているが、横モードを絞るような電子光学系は無い。

 以上から考えると、少なくとも質量の有る電子や陽電子では、横モードの拡がりは電子光学系が無くても制限されているのだ。質量が横モードの拡がりを抑えるようなメカニズムがあるのだろうか。考えられるヒントとしては、やはり de \; Bloglie の物質波か Higgs 場との相互作用ぐらいしか思いつかない。

 なお、普通の感覚で上の泡箱写真を見ると、電子も陽電子電荷を持った粒子としか思えない。 J.J.Thomson は1897年に電子線が磁場や電場で偏向する実験により電子は波動ではなく粒子と判断したようだ。そして、金属結晶による電子線回折や1989年の外村氏等による1個の電子による干渉実験によって粒子性だけでなく波動性があることが確実となった。ただし、量子場光学では電子は粒子ではなく自由電子場では電子の素励起情報の波動であって1電子レベルの電子波束であり、束縛電子場では束縛ポテンシャルに捉えられた電子の素励起情報の定在波と考えている。電場や磁場による偏向は粒子特有の現象ではなく波動でも可能なのだ。

 そこで、当面は光の横モードは基本的には無限に拡がるものとし、質量の有る電子はなんらかのメカニズムで横モードの拡がりが抑えられると仮定して、そのメカニズムの解明に注力したい。ただし、もし、光も含めてエネルギー自体が横モードの拡がりを抑えるメカニズムを思い立ったら、その時点で無節操に見直したい。。。光とは何かと「存在は全てが光」への道の両方に関わる問題なので気長にじっくりと考えてみたい。。。