エネルギーの局在性と横モードについて雑感5

 2024-02-28の投稿「エネルギーの局在性と横モードについて雑感4」の続きである。

 泡箱での電子の飛跡が細いことは上記の投稿で説明したが、電子のダブルスリット干渉の場合には別の横モードの拡がり具合を制限するメカニズムを考える必要がある。

 2024-02-21の投稿「エネルギーの局在性と横モードについて雑感3」では下記のように書いた。

『以上から考えると、少なくとも質量の有る電子や陽電子では、横モードの拡がりは電子光学系が無くても制限されているのだ。質量が横モードの拡がりを抑えるようなメカニズムがあるのだろうか。考えられるヒントとしては、やはり de \; Bloglie の物質波か Higgs 場との相互作用ぐらいしか思いつかない。』

さらに、次のように書いた。

『そこで、当面は光の横モードは基本的には無限に拡がるものとし、質量の有る電子はなんらかのメカニズムで横モードの拡がりが抑えられると仮定して、そのメカニズムの解明に注力したい。ただし、もし、光も含めてエネルギー自体が横モードの拡がりを抑えるメカニズムを思い立ったら、その時点で無節操に見直したい。。。光とは何かと「存在は全てが光」への道の両方に関わる問題なので気長にじっくりと考えてみたい。。。』

 また、2024-01-23の投稿「電子の3次元PT図と電子の質量について」に記載した下記の内容を思い出した。

『弱荷ー1を持つスピン左巻き状態 \psi_L が弱荷0のスピン右巻き状態 \psi_R に変わる際に弱荷ー1でスピン0の Higgs 粒子が放出されると考えることになる。その結果、弱荷保存則は成立することになる。 Higgs 場がスピン0であることもこれで納得がいく。言い換えれば、電子場のスピン左巻き状態 \psi_L Higgs 場と相互作用して Higgs 粒子を放出することで電子場のスピン右巻き状態 \psi_R に変わるということだ。それなら、逆に電子場のスピン右巻き状態 \psi_R Higgs 場と相互作用して Higgs 粒子を吸収することで電子場のスピン左巻き状態 \psi_L に変わると考えられる。この繰り返しがジグザグ運動であり Zitterbewegung なのだ。これを坂本眞人先生の「場の量子論Ⅱ」のp424付近の記載を参考にすると、電子場と Higgs 場の相互作用の結合係数は電子の湯川結合係数と呼ばれ、電子は湯川相互作用による Higgs 機構により質量を得るということになる。』

 考えてみるに、自由電子場を電子の素励起情報の波動が1電子レベルの電子波束として伝搬するとしているが、正確には自由電子場だけではないのだ。1電子レベルの電子波束は絶えず Higgs 場と相互作用して伝搬していく。その結果、電子は質量を得るということだが、同時に近似的に自由電子場を光速よりも遅い速度で伝搬する横モードの拡がり具合が制約された1電子レベルの電子波束として扱うことができると考えられる。これは、電子の泡箱での飛跡が細くなるメカニズムからの類推でもある。

 Higgs 場との相互作用を繰り返す1電子レベルの電子波束のイメージを下図に示す。

1電子レベルの電子波束のイメージ図

自由電子場と Higgs 場との相互作用時空点には仮想 Higgs 粒子が絶えず生成消滅を繰り返していると考えている。スピン右巻き状態 \psi_R がスピン左巻き状態 \psi_L に変わる際には弱荷ー1でスピン0の Higgs 粒子が Higgs 場で消滅し、スピン左巻き状態 \psi_L がスピン右巻き状態 \psi_R に変わる際には弱荷ー1でスピン0の Higgs 粒子が Higgs 場で生成する。これが繰り返されることで1電子レベルの電子波束は自由電子場を拡がり具合を制約された横モードを持って伝搬していくように近似できるというイメージである。

 これを自由電子場での電子として近似した電子の場図表現が以前に示した電子のPT図でそれを3次元化したのが3次元PT図である。厳密に自由電子場での電子を場図表現するためには、1回転毎に2つの図が必要ということだ。ただし、場の量子論を考慮した自仮説の量子場光学で扱うレベルでは、自由電子場での電子として近似した電子の場図表現で十分であると考えている。質量の無い光子の横モードと質量の有る電子の横モードとの対比をさせる上で、光子の横モードが基本的には進行方向と垂直な方向に無限に拡がっているのに対し、電子の横モードが質量との関係で制約を受けていることを説明するために Higgs 機構を持ち出したまでである。

実電子(±1/2)の3次元PT図

 以上のように、1電子レベルの電子波束の横モードの拡がり具合を制約するメカニズムを Higgs 機構を用いて説明を試みてみたがどうだろうか。。。