エネルギーの局在性と横モードについて雑感5

 2024-02-28の投稿「エネルギーの局在性と横モードについて雑感4」の続きである。

 泡箱での電子の飛跡が細いことは上記の投稿で説明したが、電子のダブルスリット干渉の場合には別の横モードの拡がり具合を制限するメカニズムを考える必要がある。

 2024-02-21の投稿「エネルギーの局在性と横モードについて雑感3」では下記のように書いた。

『以上から考えると、少なくとも質量の有る電子や陽電子では、横モードの拡がりは電子光学系が無くても制限されているのだ。質量が横モードの拡がりを抑えるようなメカニズムがあるのだろうか。考えられるヒントとしては、やはり de \; Bloglie の物質波か Higgs 場との相互作用ぐらいしか思いつかない。』

さらに、次のように書いた。

『そこで、当面は光の横モードは基本的には無限に拡がるものとし、質量の有る電子はなんらかのメカニズムで横モードの拡がりが抑えられると仮定して、そのメカニズムの解明に注力したい。ただし、もし、光も含めてエネルギー自体が横モードの拡がりを抑えるメカニズムを思い立ったら、その時点で無節操に見直したい。。。光とは何かと「存在は全てが光」への道の両方に関わる問題なので気長にじっくりと考えてみたい。。。』

 また、2024-01-23の投稿「電子の3次元PT図と電子の質量について」に記載した下記の内容を思い出した。

『弱荷ー1を持つスピン左巻き状態 \psi_L が弱荷0のスピン右巻き状態 \psi_R に変わる際に弱荷ー1でスピン0の Higgs 粒子が放出されると考えることになる。その結果、弱荷保存則は成立することになる。 Higgs 場がスピン0であることもこれで納得がいく。言い換えれば、電子場のスピン左巻き状態 \psi_L Higgs 場と相互作用して Higgs 粒子を放出することで電子場のスピン右巻き状態 \psi_R に変わるということだ。それなら、逆に電子場のスピン右巻き状態 \psi_R Higgs 場と相互作用して Higgs 粒子を吸収することで電子場のスピン左巻き状態 \psi_L に変わると考えられる。この繰り返しがジグザグ運動であり Zitterbewegung なのだ。これを坂本眞人先生の「場の量子論Ⅱ」のp424付近の記載を参考にすると、電子場と Higgs 場の相互作用の結合係数は電子の湯川結合係数と呼ばれ、電子は湯川相互作用による Higgs 機構により質量を得るということになる。』

 考えてみるに、自由電子場を電子の素励起情報の波動が1電子レベルの電子波束として伝搬するとしているが、正確には自由電子場だけではないのだ。1電子レベルの電子波束は絶えず Higgs 場と相互作用して伝搬していく。その結果、電子は質量を得るということだが、同時に近似的に自由電子場を光速よりも遅い速度で伝搬する横モードの拡がり具合が制約された1電子レベルの電子波束として扱うことができると考えられる。これは、電子の泡箱での飛跡が細くなるメカニズムからの類推でもある。

 Higgs 場との相互作用を繰り返す1電子レベルの電子波束のイメージを下図に示す。

1電子レベルの電子波束のイメージ図

自由電子場と Higgs 場との相互作用時空点には仮想 Higgs 粒子が絶えず生成消滅を繰り返していると考えている。スピン右巻き状態 \psi_R がスピン左巻き状態 \psi_L に変わる際には弱荷ー1でスピン0の Higgs 粒子が Higgs 場で消滅し、スピン左巻き状態 \psi_L がスピン右巻き状態 \psi_R に変わる際には弱荷ー1でスピン0の Higgs 粒子が Higgs 場で生成する。これが繰り返されることで1電子レベルの電子波束は自由電子場を拡がり具合を制約された横モードを持って伝搬していくように近似できるというイメージである。

 これを自由電子場での電子として近似した電子の場図表現が以前に示した電子のPT図でそれを3次元化したのが3次元PT図である。厳密に自由電子場での電子を場図表現するためには、1回転毎に2つの図が必要ということだ。ただし、場の量子論を考慮した自仮説の量子場光学で扱うレベルでは、自由電子場での電子として近似した電子の場図表現で十分であると考えている。質量の無い光子の横モードと質量の有る電子の横モードとの対比をさせる上で、光子の横モードが基本的には進行方向と垂直な方向に無限に拡がっているのに対し、電子の横モードが質量との関係で制約を受けていることを説明するために Higgs 機構を持ち出したまでである。

実電子(±1/2)の3次元PT図

 以上のように、1電子レベルの電子波束の横モードの拡がり具合を制約するメカニズムを Higgs 機構を用いて説明を試みてみたがどうだろうか。。。

「存在は全てが光」への道8

 2024-02-28の投稿「エネルギーの局在性と横モードについて雑感4」で提案した下図が示すようなメカニズムであれば、泡箱での電子の飛跡が細いことが説明可能である。

飛跡のイメージ図

 そうであれば、電子も光子と同様に、横モードは電子光学系による拡がり具合の制御を除いて基本的には進行方向と垂直な面に無限に拡がっているとしても良いように思われる。

 ところで、2023-07-13の投稿『「存在は全てが光」への道4』で、『光子による電子対生成を起こす条件として、なんらかの外部ポテンシャルを要しなくても、電子対生成に必要な角振動数 \omega_2 の大きい2つの光子を正面衝突させることで、電子対生成を起こす可能性があり、仮想光子を用いた実験では実現しているようである。ただし、2つの実光子の正面衝突でなく、電子・陽電子衝突実験での仮想光子同士の衝突ということのようで、実験としては実光子ではなかなか難しいようだ。』と述べた。また、『光子を質点のように考えると、光子同士の正面衝突はかなり困難なように思えるが、光子波と光子波との衝突なら可能性が高いような気がする。ただし、光子波間の位相整合は考慮しないといけないので、思うほどには容易ではないかもしれない。』と述べた。

 この点について、宇宙が創成した初期であれば高エネルギーの実光子であっても正面衝突できるほど多数の実光子が密集していたのかもしれない。そう考えれば、宇宙が創成した初期に光から電子やハドロンが生まれたという仮説も十分に考えられそうだ。。。その場合は、たぶん、真空に生成しては消滅する仮想電子対が正面衝突する実光子のターゲットになることが考えられそうだ。すなわち、自由光子場と束縛電子場との相互作用である。自由光子場を伝搬する2つの実光子が束縛電子場の仮想電子対に正面衝突すると仮想電子対は実電子対に変わり、自由電子場をそれぞれが反対方向に伝搬していく。。。こんな具合でどうだろうか。。。かなり思いつきな話ではあるが。。。

光子の正面衝突による電子対生成のイメージ図

エネルギーの局在性と横モードについて雑感4

 2024-02-21の投稿「エネルギーの局在性と横モードについて雑感3」の続きである。

 上記の投稿では、次のように書いた。

『こうなるとやはり気になるのは、質量の有る電子の横モードはどう考えたらよいかである。北陸地域アイソトープ研究会誌第5号2003年の東北大鈴木厚先生による「ニュートリノ素粒子,宇宙,地球を探る」という特別講演の解説記事に電子対生成の泡箱写真が載っていたので、下図に示す。

電子対生成の泡箱写真

光の飛跡は見えないが、電子と陽電子の飛跡ははっきりと見え、横モードの拡がり具合はかなり細い。ここでは、磁場が画面と垂直方向に印加されているが、横モードを絞るような電子光学系は無い。

 以上から考えると、少なくとも質量の有る電子や陽電子では、横モードの拡がりは電子光学系が無くても制限されているのだ。質量が横モードの拡がりを抑えるようなメカニズムがあるのだろうか。考えられるヒントとしては、やはり de \; Bloglie の物質波か Higgs 場との相互作用ぐらいしか思いつかない。』

さらに、次のように書いた。

『そこで、当面は光の横モードは基本的には無限に拡がるものとし、質量の有る電子はなんらかのメカニズムで横モードの拡がりが抑えられると仮定して、そのメカニズムの解明に注力したい。ただし、もし、光も含めてエネルギー自体が横モードの拡がりを抑えるメカニズムを思い立ったら、その時点で無節操に見直したい。。。光とは何かと「存在は全てが光」への道の両方に関わる問題なので気長にじっくりと考えてみたい。。。』

 そこで、少し考えてみたのだが、1電子レベルの電子波束の出射源が原子サイズであり、自由電子場と相互作用する泡箱中の水素原子が近接していると、1電子レベルの電子波束は同心円状に拡がる段階で泡箱中の水素原子場と相互作用することになる。ちょっとわかりにくい図になってしまったが、下図のようになる。

飛跡のイメージ図

すなわち、1電子レベルの電子波束は平面波としての伝搬ではなくて同心円状の連なりでの伝搬となるので、出射源が原子サイズだとすこしジグザグとするものの飛跡はかなり細いままとしかならないのだ。そして、電子の飛跡は細いまま少しジグザグすることになる。言うならば、ほとんど選択された水素原子の飛跡を見ていることになる。電子の横モードは平面波を前提とした表現であり、電子波束が同心円状で連なったものであると電子のみかけの横モードは制限されて細い飛跡となるのも理解できる。なお、場と場との相互作用で移動するのはエネルギーだけでなく運動量も同様であるので、極端なジグザクになることは無い。今考えているような系では系全体としてエネルギー保存則と運動量保存則とが成立している。なお、誤解を生まないように念のために説明すると、ここで「ジグザグ」という言葉を用いているが、これは Zitterbewegung とは全く関係ないことに注意が必要である。単に飛跡の形状を説明したに過ぎない。

 以上のように考えてみたが、どうだろうか。。。これならば、電子のダブルスリット干渉の場合は1電子レベルの電子波束が自由電子場を伝搬する距離が長いので平面波での伝搬として近似できるのでスリット間隔がある程度広くても干渉可能なのに対し、泡箱内での1電子レベルの電子波束は相互作用する例えば水素原子が近接しているため同心円状の波動の連なりでの伝搬となるので飛跡が細くなる。なお、出射源が泡箱の外にあり、ある程度の拡がりの横モードを持つ平面波で近似できる1電子レベルの電子波束が泡箱に入射した場合においても、泡箱内の最初の選択された水素原子が起点となって同心円状の連なりとなり細い飛跡を残すことになる。なんか、うまく説明できそうな気がするがどうだろうか。。。

量子場光学で考えた光とは何か2

 今回は、2024-01-31の投稿である「量子場光学で考えた光とはなにか」への念のための補足である。

 量子場光学では、光子は電磁場の量子化において生じる概念であるため、原子に束縛された励起電子の光学遷移によって出射される光を光子とは呼ばずに1光子レベルの光波束と呼び、光子の素励起情報の波動であるとした。光子を質点として扱うと光のダブルスリット干渉の説明が容易でない。光子は分割できないからどちらのスリットを通過したか不明とかいう意味不明の説明が必要となる。光子は電磁場の離散的なエネルギー状態を指すのであって、位置が特定できるような存在ではない。光子が剛体とするともっとおかしなこととなる。特殊相対論に対応できないのだ。したがって、光子の大きさを議論するのもおかしいことになる。

 また、1光子レベルの光波束は、エネルギーを伝搬するものではない。エネルギーは場と場との相互作用として移動するものであって、場内を伝搬するものではない。そして、自由光子場を伝搬する1光子レベルの光波束は光子の素励起情報の波動である。自由光子場が束縛電子場と相互作用する際に、束縛電子場の原子に束縛された多数の電子のうち1つの電子を確率的に選択した上で励起する。その際、自由光子場から束縛電子場にエネルギーが移動する。

 さらに、光子は電磁場の量子化によって生じる概念であるが、量子場光学では電磁場の明白な共変的量子化を採用し、B場を補助場とし不定計量を導入した共変的量子化により、2つの横波光子と1つのスカラー光子とからなる光子のイメージが明瞭となった。仮想光子とクーロン力の関係も明瞭となった。さらには、未知の統一論の候補の一つである量子 Einstein 重力による重力場の共変的正準量子論との相性が良くなった。

 さらに、量子場光学では場の量子論を考慮したので局所性は担保されている。量子力学をベースにした量子光学で登場するEPR相関も、場の量子論を考慮すると不思議なものではない。量子もつれは場の量子論で説明可能のようである。もう少し勉強は必要だが。。。

 以上のように、光のイメージをかなり明瞭にすることができるようになった。。。でも、偉そうに好き勝手に書いてしまったが、本当だろうか。。。

エネルギーの局在性と横モードについて雑感3

 2024-02-04の投稿『エネルギーの局在性と横モードについて雑感2』の続きである。

 J.J.Sakurai著の2冊の日本語訳「上級量子力学」を読み進めている。しかしながら、光子においてエネルギーを局在化するような力を示唆する記載は本の中では見つかっていない。これまで通りに、そして、下図に示したように、 \gamma 光子は確率的に原子核を選択すると考えるのが良さそうだ。自由光子場を伝搬する \gamma 光子の素励起情報の波動は1光子レベルの光波束として進行方向と垂直の横モードは光学系による拡がり具合の制御を除いて基本的には無限に拡がっている。

電子対生成のイメージ図

こうなるとやはり気になるのは、質量の有る電子の横モードはどう考えたらよいかである。北陸地域アイソトープ研究会誌第5号2003年の東北大鈴木厚先生による「ニュートリノ素粒子,宇宙,地球を探る」という特別講演の解説記事に電子対生成の泡箱写真が載っていたので、下図に示す。

電子対生成の泡箱写真

光の飛跡は見えないが、電子と陽電子の飛跡ははっきりと見え、横モードの拡がり具合はかなり細い。ここでは、磁場が画面と垂直方向に印加されているが、横モードを絞るような電子光学系は無い。

 以上から考えると、少なくとも質量の有る電子や陽電子では、横モードの拡がりは電子光学系が無くても制限されているのだ。質量が横モードの拡がりを抑えるようなメカニズムがあるのだろうか。考えられるヒントとしては、やはり de \; Bloglie の物質波か Higgs 場との相互作用ぐらいしか思いつかない。

 なお、普通の感覚で上の泡箱写真を見ると、電子も陽電子電荷を持った粒子としか思えない。 J.J.Thomson は1897年に電子線が磁場や電場で偏向する実験により電子は波動ではなく粒子と判断したようだ。そして、金属結晶による電子線回折や1989年の外村氏等による1個の電子による干渉実験によって粒子性だけでなく波動性があることが確実となった。ただし、量子場光学では電子は粒子ではなく自由電子場では電子の素励起情報の波動であって1電子レベルの電子波束であり、束縛電子場では束縛ポテンシャルに捉えられた電子の素励起情報の定在波と考えている。電場や磁場による偏向は粒子特有の現象ではなく波動でも可能なのだ。

 そこで、当面は光の横モードは基本的には無限に拡がるものとし、質量の有る電子はなんらかのメカニズムで横モードの拡がりが抑えられると仮定して、そのメカニズムの解明に注力したい。ただし、もし、光も含めてエネルギー自体が横モードの拡がりを抑えるメカニズムを思い立ったら、その時点で無節操に見直したい。。。光とは何かと「存在は全てが光」への道の両方に関わる問題なので気長にじっくりと考えてみたい。。。

量子もつれ光の解釈について5

 2024-02-18、すなわち今日の投稿「量子もつれ光の解釈について4」で、J.J.Sakurai(桜井純)著の日本語訳「上級量子力学第2巻」に記載の内容を読んで量子もつれについてすっきりとした。そこで、2023-09-24に投稿の「量子もつれ光の解釈について2」に書いた内容を読み直してみた。すると、その内容がおかしいことに気が付いた。以前の投稿内容ではダブルスリット干渉での考え方と矛盾するのだ。ダブルスリット干渉は1光子系で量子もつれ光は2光子系で考える必要がある。(3光子系以上もあるだろうがここでは考えない。)そこで、今回、節操も無く以前の投稿を早速見直してみることにした。これなら前回よりも納得できる内容である気がする。なお、自由光子場を伝搬する1光子レベルの光波束のことを光子波と呼び、敢えて自由光子場に存在する光子とは区別することにする。

 以下では、自仮説の量子場光学での量子もつれの解釈の見直しを試みる。パラメトリック下方変換のタイプⅡの説明図を下に示す。

パラメトリック下方変換タイプⅡ

非線形光学結晶である例えばBBO結晶にポンプ光として1つの光子波を照射すると、正常光(光子波A:垂直偏光(V))と異常光(光子波B:水平偏光(H))の光錐が生成される。すなわち、ポンプ光の1つの光子波から自由光子場を伝搬する光子波Aと光子波Bの2つの光子波が生成される。そして、自由光子場には光子Aと光子Bが存在することになる。光子波Aの光錐と光子波Bの光錐との2つの交点にそれぞれピンホールを置くことで光子波Aと光子波Bの素励起情報が足し合されたそれぞれ光子波1と光子波2との2つの光子波を取り出すことができる。そして、光子波1と光子波2とは量子もつれエンタングルメント)を成している。なお、ここで、光子波と呼んでいるものは、正確には光子の素励起情報の波動を意味する。正常光及び異常光の光錐は素励起情報の波動が作る光錐である。さらに言えば、光子波は正確にはゲージ場 A_\mu(x) の波動である。パラメトリック下方変換は非線形光学結晶を使って1光子系の自由光子場を2光子系の自由光子場に変換する点に特徴がある。したがって、2光子系の自由光子場には光子Aと光子Bとが存在する。自由光子場内の光子波の伝搬と自由光子場の光子の存在とを区別して考える必要があることに注意すべきである。

次に、量子もつれ光の同時検出系の説明図を下に示す。

同時検出光学系

ピンホール1から取り出した光子波1の素励起情報は光子波Aの素励起情報と光子波Bの素励起情報とを足し合わせたものであり、同様にピンホール2から取り出した光子波2の素励起情報も光子波Aの素励起情報と光子波Bの素励起情報とを足し合わせたものである。すなわち、光子波1も光子波2も素励起情報が同じである。これは、光子波1及び2のいずれの素励起情報も光子波A及びBの両方の素励起情報を含んでいるという意味である。そして、自由光子場は2光子系であって光子Aと光子Bとが存在する。光子波1及び2の素励起情報の波動が検出器1及び2にそれぞれ伝搬して到達すると、検出器1及び2を構成する原子に束縛された電子がそれぞれ励起されることになる。ここで、検出器1及び2の出力を同時検出器で同時(同時刻)に到達した光子のみをカウントすることとする。その場合、光子1の素励起情報に含まれる光子波Aの素励起情報に基づいて検出器1の原子に束縛された電子1が確率的に選択されて励起されたとする。これは自由光子場の光子Aのエネルギー及び運動量が束縛電子場の電子1に移動したことを意味する。すると、自由光子場には光子Bしか残っていない。したがって、検出器2の原子に束縛された電子2は光子2の素励起情報に含まれる光子Bの素励起情報に基づいて確率的に選択されて励起される。これは自由光子場の残された光子Bのエネルギー及び運動量が束縛電子場の電子2に移動したことを意味する。逆に、光子1の素励起情報に含まれる光子Bの素励起情報に基づいて検出器1の原子に束縛された電子1が確率的に選択されて励起されたとする。これは自由光子場の光子Bのエネルギーと運動量が束縛電子場の電子1に移動したことを意味する。すると、今度は自由光子場には光子Aしか残っていない。したがって、検出器2の原子に束縛された電子2は光子2の素励起情報に含まれる光子Aの素励起情報に基づいて確率的に選択されて励起される。ピンホール1及び2をそれぞれ同時(同時刻)に通って来る光子波は素励起情報としては光子波Aと光子波Bとの足し合わせとなって同じものなのだが、自由光子場には光子Aと光子Bの2つしか無い。したがって、束縛電子場の電子1が確率的に選択された時点で自由光子場の2つの光子のうちの1つはエネルギー及び運動量が電子1に移動することで消滅し、残りの光子しが自由光子場に存在しないことになるのだ。

 その結果、検出器1で検出される光子Aが垂直偏光(V)であれば検出器2で検出される光子Bは水平偏光(H)というように、もしくはその逆の関係というように、光子A及びBの偏光状態は互いに直交していることになる。もちろん、なお、量子光学における同時検出測定においては、多数回測定を行い統計的に評価する。すなわち、多数の光子波を取り扱うことになる。同じポンプ光の光子から変換された光子Aと光子Bとは同時に生成する。したがって、同時検出の時間幅を広く設定した場合はポンプ光の光子が同じとは限らないものが混ざることになり相関性が低下することになるものと思われる。

 自仮説の量子場光学での量子もつれ光の解釈を、以上のように見直してみたのだがどうだろうか。自由光子場内を伝搬する光子波と自由光子場の光子を区別することができて、以前よりずっとスッキリした気分だ。それでもまだ怪しげなことを書いているかもしれない。気がついたら修正することとし、今はすっきりで良い気分だ。。。

量子もつれ光の解釈について4

 エネルギーの局在性と横モードについて電子対生成の観点から何かヒントが無いかと、J.J.Sakurai(桜井純)著の日本語訳「上級量子力学第2巻」を読み進めているが、思わぬところで量子もつれについての記述を見つけてしまった。J.J.Sakurai著の日本語訳「上級量子力学第2巻」のp293からp295辺りだ。EPRについての記述がある。なお、この本の原本は1967年の出版でシカゴ大学のPh.D専攻の学生向けに教科書として使用されたようだ。そして、日本語訳本は日立の樺沢氏により2010年に出版された。

 さて、具体的には、p294の『我々が光子1の偏光を測定するとき、測定の対象となる量子力学系は1光子状態 a_{\mathbf{k}, \alpha}^\dagger |0> ではなくて、状態ベクトルが式(4.214a)で与えられる”複合的な”2光子系である。量子力学における2光子系は、たとえその光子同士が互いに100万マイル離れていて相互作用をする可能性が無いとしても、これを2つの独立な1光子系のように見なすことは正しくない。いかなる一方の光子に対する測定も、2光子系全体に対する測定と見なされる。観測者Aが、光子1の偏光が x 方向であることを見いだしたならば、彼が実際に知ったことは2光子系が a_{\mathbf{k}, 1}^\dagger a_{- \mathbf{k}, 2}^\dagger |0> という状態であり、 a_{\mathbf{k}, 2}^\dagger a_{- \mathbf{k}, 1}^\dagger |0> という状態ではないということである。・・・(略)・・・この観点からすると、観測者Bが必ず光子2の偏光を y 方向に見いだすことは、とりたてて特異なことではない。光子1に対する測定が、実際には”複合的な”2光子系が a_{\mathbf{k}, 1}^\dagger a_{- \mathbf{k}, 2}^\dagger |0> a_{\mathbf{k}, 2}^\dagger a_{- \mathbf{k}, 1}^\dagger |0> かを決める測定であるという観点を我々が受け入れるならば、 Einstein-Podolsky-Rosen の逆理は逆理でなくなる。』という記述である。

なお、上記での式(4.214a)で与えられる”複合的な”2光子系とはp289の次式のことである。

 \qquad \displaystyle{\frac{1}{\sqrt{2}} \left( a_{\mathbf{k},1}^\dagger a_{-\mathbf{k},2}^\dagger + a_{\mathbf{k},2}^\dagger a_{-\mathbf{k},1}^\dagger   \right) |0> } ・・・(4.214a)』

 これを読んでかなりスッキリした。こんなに以前から場の量子論に基づくEPR問題の解説が為されていたのだ。場の量子論を考慮する量子場光学は、光子は場の離散的なエネルギー状態を意味するもので、それゆえに、原子に束縛された励起電子からの光を1光子レベルの光波束であり光子の素励起情報の波動と呼んで、光子と区別することにこだわった。

 なお、2023-11-05の投稿「量子場光学の考え方」に次のように書いた。

量子もつれ(量子エンタングルメント)についての考え方もここで少し触れたい。これまでの投稿(2023-09-24及び2023-09-27)では2つの1光子レベルの光波束について互いの光子の素励起情報が同じ場合だけを例に挙げて説明したが、もつれていると言う意味は関係付けられているという意味であって、例えば一方の光子の素励起情報と他方の光子の素励起情報について位相が \pi 異なっているという関係付けがあればこれも量子もつれであることを意味している。広く言えば、複数の量子の素励起情報において互いに関係付けがあればその関係付けに基づいて量子もつれしているというふうに考えている。この関係付けが一般には相関と呼ばれている気がする。そして、この相関は素励起情報の重ね合わせをしても失われない。なお、量子もつれは多粒子系(多体系)の量子力学に対応する概念で、各粒子のそれぞれの状態に着目してから複数粒子全体の状態を考える。それに対して、量子場光学では複数粒子が存在する場の状態に着目してからそこに含まれる粒子の状態を考えているつもりである。物を見る順番が異なるので、量子力学でいう量子もつれと量子場光学で私が勝手に考えている量子もつれとはちょっとずれて異なっているのかもしれない。今後の検討課題だ。』

 「上級量子力学第2巻」の記述が説明するように、量子もつれを取り扱うには場の量子論を考慮して場の”複合的な”2光子系をまず考えるのであって、2つの光子という粒子像でいきなり考えると物理的イメージがわからなくなるのだ。そして量子場光学のように、場の量子論を考慮すれば量子もつれに不思議なところは無いというのはまんざら間違いとは言えないような気がしてきた。。。ただ、専門家にとってはたぶん当然のことなんだろう。。。それなら、量子光学の本にも参考として場の量子論から見た考え方も併記してくれていたらわかり易いと思うのだが。。。ただ、量子もつれエンタングルメント)はこの本が書かれた後も色々と発展してきているようだ。私が理解したのはほんの一部に過ぎない。最近の量子もつれの本を読んでもう少し理解を深めていきたいと思う。。。また、ここで忘れてはならない点だが、量子もつれが不思議な世界に留まるのであれば技術として使用するには不安を伴うことになる。理論的に裏付けられて不思議な世界でなくなって初めて安心して利用できる技術ということになる。その意味で、場の量子論を考慮して量子もつれを検討することは重要だと思うのだが。。。なんて。。