「存在は全てが光」への道9

 宇宙が創成した初期であれば高エネルギーの実光子であっても正面衝突できるほど多数の実光子が密集していたのかもしれない。そう考えれば、宇宙が創成した初期に光から電子やハドロンが生まれたという仮説も十分に考えられそうだ。その場合は、たぶん、真空に生成しては消滅する仮想電子対が、正面衝突する実光子のターゲットになることが考えられそうだ。すなわち、自由光子場と束縛電子場との相互作用である。自由光子場を伝搬する2つの実光子が束縛電子場の仮想電子対に正面衝突すると仮想電子対は実電子対に変わり、自由電子場をそれぞれが反対方向に伝搬していく。

光子の正面衝突による電子対生成のイメージ図

 なお、上記の電子対生成で生じた電子は実際は下図のように Higgs 場と相互作用を繰り返して質量を得ており、近似的に自由電子場を光速よりも遅い速度で伝搬する実電子の素励起情報の波動として振る舞っている。上記の電子対生成で生じた陽電子 Higgs 場と相互作用を繰り返して質量を得ている点は電子と同様である。

1電子レベルの電子波束のイメージ図

 以上のように、高エネルギーであって正面衝突できるほど多数の実光子が密集していれば、電子対生成が起こって電子と陽電子とが同数生じる。ただし、現実の宇宙においては電子の数に比べて陽電子の数は極めて少ない。サハロフの3条件というのがあって、(1)C対称性及びCP対称性の破れ、(2)バリオン数の非保存、(3)バリオン数が変化する時点での宇宙の熱的非平衡、の3つの条件が必要と考えられているらしい。しかし、CP対称性の破れは弱い相互作用でしか見つかっていないようだ。まだまだ謎は深そうだ。。。