初心に返って量子論:正準交換関係

 光とは何かを明らかにしたくて自仮説の量子場光学の構築を目指した。それといっしょに、量子論の勉強もしてきた。特に、電磁気学量子力学、特殊相対論、そして場の量子論と、色々と雑学的に勉強しつつ、量子光学の本も読んできた。しかし、じっくりと勉強したかというと、結構流し読みになることが多かった。

 そこで、色々な本を読み返して理解を基本的なところから深めていきたいと思う。ただし、自仮説の見直しが目的なので、自仮説と比較することは必要である。そうすれば、自仮説の問題点も見えてくる気がするからだ。

 今回は、正準交換関係について復習する。なお、 Lagrange 形式で表すことにする。また、時間発展を演算子に負わせる Heisenberg 描像を用いることにする。したがって、同時刻交換関係である。

 まずは有限自由度の量子力学では、正準変数として一般化座標  q (t) とそれに共役な一般化運動量  p (t) とを設定し、それらの間に自由度が1の場合は次の交換関係が成立する。

 \qquad \displaystyle{ [ \hat{q} (t), \hat{p} (t) ] = i \hbar }

ここでは、オブザーブルを表す演算子 \hat{q} (t), \; \hat{p} (t) で置き換えられている。なお、多自由度の場合は次の交換関係が成立する。

 \qquad \displaystyle{[ \hat{q}_j (t),\hat{p}_k (t) ] = i \hbar \delta_{j,k}, \; [\hat{p}_j (t),\hat{p}_k (t) ] = [ \hat{q}_j (t),\hat{q}_k (t) ] = 0 }

 一方、無限自由度の場の量子論では、正準変数として場  \phi (t,\mathbf{x}) とそれに共役な一般化運動量  \pi (t,\mathbf{x}) とを設定し、それらの間に次の交換関係が成立する。

 \qquad [ \hat{\phi} (t, \mathbf{x} ), \hat{\pi} (t, \mathbf{y}) ] = i \hbar \delta^3 (\mathbf{x} - \mathbf{y}), \\ \qquad [ \hat{\pi} (t,\mathbf{x}), \hat{\pi} (t,\mathbf{y}) ] = [ \hat{\phi} (t,\mathbf{x}), \hat{\phi} (t,\mathbf{y}) ] = 0

ここで、量子力学と場の量子論とを比較してみると、まずは有限自由度か無限自由度かという点である。場の量子論は定性的なので定量性は量子力学に依存するということになる所以である。場の量子論繰り込み可能であっても摂動近似に頼るしか計算が困難という点がある。

 次に比較すべき点は、量子力学の正準変数はオブザーブルなのに対し、場の量子論の正準変数は間接的にしか観測できない量であることである。

 光を理解するには場の量子論により電磁場を量子化するのが良いが、場の量子論は発展途上と心もとなく定性的理解に使うにしても、定量性が確立された量子力学に頼るというのが妥当なスタンスかなと、正準交換関係だけ見ても思えてしまう。。。ところで、正準交換関係による正準量子化という考え方はたぶん Dirac が生み出したように記憶しているが、どのように考えて思いついたのだろうか。すっきりしたいので、正準交換関係の根拠、特に量子力学演算子が非可換となり i \hbar が登場した経緯をもうちょっと調べてみようかと思う。。。とはいえ、私の力量不足でうんざりして終わりそうだけど。。。