初心に返って量子論:古典場と量子場

 今回は、古典場と量子場との違いについて書いてみる。新井朝雄先生の著書「物理学の数理」のp311の脚注に『プランク定数 h 2 \pi で割った定数 \hbar が(6.49)に含まれているからといって、それがただちに量子論と結びつくと考えてはならない。』との記述がある。そして、p311に次の式(6.49)があり、『場の方程式(6.49)を自由なド・ブロイ方程式と呼び、その解を自由なド・ブロイ場という。』と紹介されている。もちろん、このド・ブロイ場は古典場である。

 \qquad \displaystyle{ i \hbar \frac{\partial \psi (x)}{\partial t} = - \frac{\hbar^2}{2m} \Delta \psi (x) } ・・・(6.49)

そう言えば確かに、正準交換関係(もしくは正準反交換関係)を用いて正準量子化してこそ量子場となる。虚数 iディラック定数 \hbar量子論特有のものではないのだ。

 ついでに、p299辺りに古典場としての相対論的実スカラー場という実クライン―ゴルドン場についての記述がある。自由なクラインーゴルドン方程式である式(6.15)を以下に示す。

 \qquad \displaystyle{ \square \phi (x) + \kappa^2 \phi (x) = 0 } ・・・(6.15)

そして、粒子的描像での粒子の質量 m は次式(6.19)となる。

 \qquad \displaystyle{ m := \frac{\hbar \kappa}{c} } ・・・(6.19)

 以下は私の勝手な解釈だが、ここで、運動量 \mathbf{p} を用いて de \; Bloglie の物質波( \mathbf{p} = \hbar \mathbf{k})と並べてみると、

 \qquad \displaystyle{ mc = \hbar \kappa \longrightarrow \mathbf{p} = \hbar \mathbf{k} }

もちろん、 \kappa は波数 \mathbf{k} ではない。しかし、似ている。さらに、両方に光速 c を掛けると、

 \qquad \displaystyle{ mc^2 = c \hbar \kappa \longrightarrow c \mathbf{p} = c \hbar \mathbf{k} }

 mc^2 は質量エネルギーで、 c |\mathbf{p}| は運動エネルギーで、両方を2乗して足すと、

 \qquad \displaystyle{ E^2 = (mc^2)^2 + (c |\mathbf{p}|)^2 }

これは質量 m で運動量 \mathbf{p} の相対論的自由粒子のエネルギーではないか。

 ともあれ、非相対論的でも相対論的でも古典場で \hbar は登場する。ということは、量子場は正準(反)交換関係が正準量子化の要諦で演算子が非可換であることが重要ということであって、 \hbar は関係ないようだ。。。ということは、 M.Planck の放射公式も古典論で量子論の手前だったということだ。量子化の一歩手前の離散化ということか。。。